Neon Garden

Neon Garden

「突然ですが、最近アルバムを一作丸々聴けていますか?」。Penthouseの浪岡真太郎(Vo/G)は、Apple Musicに語る。「正直、僕は聴けていないです。というか、そもそも昔からそういった高尚な聴き方はできていなかったかも」 のっけからリスナーを驚かせるような告白だが、これこそがPenthouseのサードアルバム『Neon Garden』の核心を突く一言だ。根っからの音楽ラバーである彼らは、世界中にどれほど魅力的な音楽があふれているかを知っている。いや、音楽に限らず、現代はあらゆる刺激的な情報で満ちあふれている時代だ。そんな世界で、自分たちが提示できるものとは何か。浪岡はシンプルかつ力強い答えを提示する。「刺激に慣れたみんなのために、どこからどう聴いても『最高!』と思えるアルバムを作りました」 ポップ、R&B、ソウルなど多彩なジャンルを自在に横断し、胸躍るグッドミュージックを紡いできた6人。今作では改めて自身のルーツとオリジナリティを見つめ直し、徹底的に磨き上げた。それは、活動開始から7年がたち、バンドとしての過渡期を迎えた彼らに、音楽を鳴らす初期衝動を思い出させるプロセスでもあった。「Drop It Down」のように強烈なグルーヴを放つ楽曲をはじめ、音を交わすのが楽しくてたまらないというピュアな熱量がそのままパッケージングされている。 浪岡と大島真帆(Vo)のツインボーカルがエモーショナルに交錯し、躍動するアンサンブルと華やかなホーンセクションが鮮やかな色彩を描き出す。恋の甘さや痛み、青い衝動、そして怒り。1曲ごとにさまざまな感情に寄り添い、一本の映画のように濃密なドラマを紡ぎ出していくその音楽は、まさに人間讃歌ともいうべき力強いメッセージを放つ。だからこそ浪岡は、「気になった曲から、飽きるまで好きに楽しんでもらえたらうれしい」と自信を持って伝える。ここからは浪岡、大島、大原拓真(B)の3人に全曲を解説してもらおう。 恋する神様 大原:現代の女子高生の恋愛を切り取ったようなアイテムや情景が、韻にフォーカスした歌詞に融合したPenthouse史上一番のキャッチーソング。覚えやすいメロディにMoogのフレーズやベースのスラップも相まって、誰もが気づけば踊り出したくなる一曲に仕上がっています。 一二三 浪岡:音楽は楽しい。実は我々Penthouseというバンドに通底するテーマ。音楽には何かといろんな文脈が付きまとう。このアルバムはこういう時期にアンチテーゼとして出されたとか、この歌詞にはこういう暗喩がとか。それはそれで一つの楽しみ方だけど、ただ音楽を聴く/演奏することの根源的な楽しさにはまるで敵わない。そういう思想をとてつもなくキャッチーに誰もが体感できるように曲として形にできた気がしています。 Minute by Minute 浪岡:失恋からもう少しで立ち上がりきれそうな時、遠くなってしまった面影がかえって鮮明に、寂しく感じられる気がしています。この曲も、曲が進む時間に応じてエネルギーが膨らんでいって、最後にはフッと消えてしまうような、思い出の叫びのような瞬間を描いています。ぜひいろんなことを思い出しながら聴いてみてください。 青く在れ 浪岡:部活の大会でも受験でも、何かその一点に向けて脇目も振らず努力する瞬間を僕は何よりも重要だと感じます。結果は正直どうでもよくて、もちろん渦中では結果を追い求めるべきですが、何より本気を出して頑張ったらこれだけ世界を変えられたという効力感。それこそが努力の最大の報酬だと思います。 Balloon 浪岡:華やかなデートとか、サプライズとか、僕は本当に苦手なタイプです。というかそんなものよりも何げない日常を楽しく共に過ごすことが本質だと思います(と言い張ることで免罪符にしようとしているのかもしれませんが)。そういう日々の中でふと浮かんでくる、柔らかにゆっくりと膨らんでいく愛情を描いた曲です。 ナンセンス 浪岡:「怒りは貧乏人に残された最後のエンタメだ」という格言があります。言い過ぎ感もありながら妙に身に覚えのあるこの言葉。そんな低俗なエンタメは古くからロックと組み合わされて最高の形に昇華されてきました。SNSのあれこれで溜まったフラストレーションをこの曲でぜひ発散してください。 シルエット 大島:SNSを通じてトレンドが簡単にキャッチできるようになった現代社会で、かわいいあの子をついつい真似して生きてしまうような女性が自分自身を解き放つための応援歌。ホーンセクションとストリングスの効いた、ぜいたくなサウンドと共に味わっていただきたいです。 隣の恋は青 浪岡:不倫してる友達って、何言ってもダメじゃないですか? そういう恋の盲目さによって引き起こされる独特のドライブ感がうまく曲に落とし込めている気がします。 Planetary 浪岡:高校生の頃、いい感じに付き合いそうだったのに、なんやかんやあって結局付き合わなかった人がいて、その辺の答え合わせをしてみたい気持ちがあったのですが、最近は答え合わせしないままの方が長く楽しめていいんじゃないかと思い始めています。そんな曲です。 Drop It Down 浪岡:Penthouseは大学サークル出身で、当時はブラックミュージックのコピーをよくやっていました。最近、僕が好きなアメリカのバンドが、アルバムで一曲、その手のブラックミュージックの露骨なオマージュをやっていて、調べてみたら彼らもどうやら大学のサークル出身のようなことが書かれていました。遠く離れたところで全く関わりのない人生を歩んでいて、それでも同じように音楽を楽しんでいる人たちがいるのが、なんだか良すぎて、僕も思わずそういう曲を書きました。