三者山羊

三者山羊

「今この時の最高打点であり、ここからまだまだ伸びるということを示せるアルバムになった」。Chevonの谷絹茉優(Vo)は、メジャーデビューアルバム『三者山羊』についてApple Musicに語る。北海道で結成され、ライブシーンで急速に存在感を高めてきた3ピースバンドのChevon。2025年には26本のフェスティバルに出演し、ツアーも大盛況。韓国で初海外ライブを行い、東京スカパラダイスオーケストラとのコラボレーションも果たすなど、その歩みはさらに加速している。「スピード感をもって直線距離でここまで来た。しっかり登ってきた感覚がある」とKtjm(G)は振り返る。 今作の制作にあたり、バンドはまずレコーディング合宿に入った。2週間で10曲以上を作り上げるというハードなスケジュールで、Ktjmは「箱詰めになって全力疾走だったから、合宿中の記憶がほぼない」と笑い、オオノタツヤ(B)もうなずく。「僕らはレコーディングしながら曲を作るし、その中で一人一つは面白いことをしなきゃいけない、みたいな雰囲気がある(笑)。だからあの合宿はかなり挑戦でした」。この生き急ぐような制作姿勢は、「バンド活動とは、今の最大出力で出せるだけのものを出して残す作業である」という彼らの信念に基づいている。その思いは、「デイジー」で歌われる「手遅れになる前に書き切って仕舞えよ」というフレーズにも表れている。 Chevonが大切にしているもう一つの理念が、「誰か一人のバンドになってはいけない」ということだ。“山羊(ヤギ)肉”を意味するバンド名と“三者三様”を掛け合わせたタイトルには、その思いを込めたと谷絹は明かす。「『三者山羊』とはつまりChevonのこと。メジャーに行っても変わらずにバンドの内圧を高め、変化し続ける。ここからもっとすごくなっていくから覚悟しておいてね、という位置づけの作品として受け取ってほしい」。ここからは、メンバー3人にいくつかの楽曲について語ってもらおう。 冥冥 谷絹:今回のアルバムは、これまでChevonを支えてきた曲たちと、合宿で新しく作った十数曲を全部並べ、13曲選んだところで曲順を決めました。1曲目に新曲ではなく、これまでのメインどころだったこの曲を置いたのは、「ここからの展開どうなると思う?」という問いかけでもあります。 デイジー オオノ:ベースって本来は縁の下の力持ちみたいな役割があるけど、僕はそこにあんまり固執していなくて、ベースだけど前に出て主張していくスタイル。それがすごくマッチするのが、今のChevonだった。ベース、ギター、ボーカル、それぞれのくせや個性の強さがぶつかって、化学反応が起きる部分をいつも大事にしています。2番のAメロで披露したスラップも、当初は全然そんな予定じゃなかったけど、レコーディング中にふと思い付いた。メンバー全員がそうやって急に始めるので、レコーディングは本当に大変です。 さよなら、アイリーン 谷絹:インディーズアルバム『Chevon』の最後に入っている、ワンコーラスだけのシークレットトラックが基になった曲。ライブでもほとんど演奏したことがなくて、今回改めて編曲してフルコーラスにしました。「アイリーン」は、ギリシャ神話に出てくる平和の女神。『Chevon』を出したころは、自分の中の平和や安定とさよならして、音楽の道を歩いていかなきゃいけないと思っていた。その思いを、メジャーに行った今はさらに深く感じているので、その変化が歌い方や編曲、そして2番の歌詞に自然と出ていると思います。 B.O.A.T. 谷絹:タイトルは“Brightest Of All Time”の略で、19億光年以上先から観測された、宇宙最大級の爆発現象のこと。その光にも、伝わり始めた最初の一歩があった。もし自分から19億光年先に何かを伝えようと思ったら、その一歩目って途方もなくて、不安で、正直怖い。ただ、宇宙という存在はすごく神秘的で、包み込んでくれるような温かさも感じます。いつか我々の生命活動が終わっても、音楽はいろんな媒体で残り続けて、何百年か先に誰かを救えるかもしれない。そう考えたら、やっぱり“爆発”を残しておくことに意味があると思います。 春の亡霊 Ktjm:僕らはよく情景を共有しながら曲を作ります。この曲の情景の物語は僕が担当しました。春の曲を作りたくて、恋する人が好きな人に会いに街へ向かう途中の情景を思い浮かべて、まずギターのバッキングを作り、「ここにベースと歌を入れてくれない?」みたいな感じで始まったと思います。ただ、物語の細かい部分はみんなすぐに忘れちゃって、最終的に残るのはエモーショナルの部分だけなんです。