

2020年の前作『It Is What It Is』で、Thundercatは親友でありコラボレーターでもあったマック・ミラーの死を受け、濃密なジャズファンクのグルーヴに乗せて悲しみに向き合った。それから6年後、卓越したベーシストでありバンドリーダーでもある彼は、いまだその渦中にいる。 『Distracted』でのThundercatは、現代社会の過剰な刺激が引き起こす混乱した感覚を捉え、それを創造の糧にしてみせる。「Great Americans」ではメッセージの内容を考え過ぎたり、猫たちと会話したりしながら、「目覚めれば燃え尽きて/一日が炎の中で始まる(Wake up, burnt out/Start the day in flames)」と歌う。WILLOWと組んだ深海のソウル叙事詩「ThunderWave」や、スペースファンクのラブソング「Walking on the Moon」といった、心地良く酔いしれるような曲もある一方で、人間関係が頭痛や混乱の前兆として描かれてもいる。Tame Impalaとのコラボレーションで、傷付いた流れ者に捧げる「No More Lies」や、The Lemon Twigsがプロデュースした、AOR的なサウンドをまとい実存主義を匂わせる「What Is Left To Say」ではそれが顕著だ。 とはいえ、Thundercatのトレードマークであるダークなユーモアは健在で、「You Left Without Saying Goodbye」のエンディングでは、成人向けのSNSで足の写真を売る副業を始めようかと検討中だと言ってのける。その他のゲストには、フライング・ロータス、リル・ヨッティー、エイサップ・ロッキーが名を連ね、さらにマック・ミラーとの未発表コラボレーションも収録されている。