DEAR MYSTERIES

DEAR MYSTERIES

「隠されていた宝が集まったようなアルバムかもしれません」。TOMOOはセカンドアルバム『DEAR MYSTERIES』について、Apple Musicに語る。自分の内面を掘り下げて普遍的なポップスに落とし込んだ前作『TWO MOON』から約2年ぶりとなる本作には、内なる旅を続けるTOMOOがさらに奥深い心象風景を描き出す12曲が並んでいる。「ファーストアルバム『TWO MOON』が13色の色鉛筆だとして、それだけでもフルカラーという感じがするけど、その先の色は他にも無数にあって」とTOMOOは明かす。「ファーストでまだ見せられなかった面がありました。それは例えるなら裏庭や奥の部屋のようなものというか。『DEAR MYSTERIES』ではそういった曲も新たに収めています」 タイトルに用いられた“ミステリー”とは、謎や不可解なものを指す言葉だが、TOMOOにとってそれは、自分の心の奥を見つめるための鍵でもあるようだ。他の誰よりも知っているはずの自分、その中から絶えず湧き上がってくるさまざまな感情や記憶に耳を澄ませながら、TOMOOは音楽という形でそっとすくい上げていく。「ファーストの続きであると同時に、ファーストを経たからこそ掘り起こせたし、見せることができた」と、TOMOOは確かな自信をにじませて語る。「それは新境地というのがふさわしいのか? むしろ、元々あったけれどまだ表に出ていなかった古いものなのか? そのどちらとも言える気がします」。名もなき感情を見つめ、色とりどりの鉛筆で心の奥に広がる風景を描いたTOMOOに、ここからは全曲の解説をしてもらおう。 Present 曲がまだ半分もできていなかった段階で、もう編曲にも取り掛かった珍しい曲でした。最初に決まっていたのは裏打ちのクラップと、指でピアノの縁をはじく音を携帯で録音したパーカッション代わりの音だけ。でも最終的には、かなりの大編成のサウンドに。生楽器の彩りの豊かさもゴスペル調のコーラスの存在感も、すべてが生き生きと「君」へ、そして幸せへと向かっていくピースフルでにぎやかな曲になりました。 あわいに 「あわい」という言葉をいつどこで知ったのか思い出せません。けれどこの曲を書いたことで、以前からぼんやりとした希望を見いだしていたあり方や、空間を指す言葉として、自分にとって特別なものになりました。トオミヨウさんの編曲で、存在感のあるフルートをはじめ、より朗らかな風が吹いた気がします。 餃子 餃子の曲というのは実は2、3年以上温めていたモチーフ。人間関係や社会での“皺寄せ”と、餃子のひだの連なりを重ねたらおもしろいかも、と思ったのがきっかけでした。今だからこそ歌えるトーン、テーマ。個人的には「Grapefruit Moon」や「Super Ball」の延長線上の歌でもあるかも、と思っています。 コントラスト 「うれしい」と、「かなしい」や「さみしい」のような、相反するものが共存するのが自分が作る曲の癖だし、ポップスとしての好きな味。それこそが「切ない」ということなのかも、と近年分かってきたけれど、10代の頃の実感としても、そんなふうに一喜一憂していたことを思い出しました。初めてアニメのエンディング曲を務めさせていただいて、小学生や中学生の頃、ただリスナーとしてアニメ主題歌を口ずさみながら夢見ていた日々が、今につながったようで感慨深かったです。編曲を初めて江口 亮さんにお願いできたのも夢だったのでうれしい。 エンドレス 昔、学校で習った遺伝子の「二重螺旋構造」と、人生の歩みとしての“時”を螺旋の形でイメージしたことが合わさって、「二つのリボン」という歌詞の言葉につながっています。交わらないまま、完結することがないような関係のあり方も、決して不幸だとか虚しいとはいえないのでは?と思いながら書きました。 LUCKY 「面白い」と言ってもらって救われてきたし、愛すべき誰かに対して自分も「面白い」って思ってきた人間だから、「君はぜったい面白い」とか「君がいてうれしい」とか、そういうことをこの歌でストレートに言えてよかった。 雨粒をつけたまま 数年前、うだつのあがらない日々にいつも不甲斐ない気持ちでいた自分が書いた歌。繰り返す「これでいいんだ」という歌詞は、言い聞かせるようでありつつも、それは嘘じゃないと当時もどこかでわかっていました。そして今、やっぱり「それでよかったよ」と言えます。目に映るもの以上に、見えないところに豊かさがあると信じたことを、自分の立っている場所や状態が変わっても忘れないでいたい。 ナイトウォーク 19歳の時に書いた古い曲。10年ごしの約束を果たすような形でBREIMENの高木祥太さんが編曲してくれました。ライブによって毎回形態やアレンジが変わってきた曲でしたが、今回の新しい編曲によって、子供の頃、街に対して抱いていた幻想というか、平成のインダストリアルな郷愁を呼び起こすような音風景になりました。むしろ作曲時の“若さ”への回帰のようにも思えます。 ハックルベリー・フレンド 元々「Moon River」が好きで、そこからいくつかインスピレーションを受けました(「ハックルベリー・フレンド」や「虹」というキーワードは特に)。誰かとずっと一緒に歩むことは難しいと知っていきながら、互いに子供同士のようになれる存在がどれほどかけがえないものか、たとえ物理的にそばからいなくなったとしても、その瞬間の喜びは消えないということを思いながら書きました。編曲のKroiの千葉大樹さんとは同い年で、うれしい初タッグでしたが、共同でディレクションしてくださったKazuki Isogaiさん(G)、YUNAさん(Dr)、オオツカマナミさん(Ba)も、皆近い世代のメンバーでぎゅっと一緒にスタジオで録音したのが新鮮で楽しかったし、曲相にも合っています。 Lullaby to my summer 次のアルバムには絶対に入れよう、と決めていました。自分にとって引き出しの奥の宝石のような曲です。小西遼さんによる編曲で、2024年の管弦楽器を中心としたアコースティックライブ『Mirrors』で披露したバージョンのニュアンスも残しつつ、アルバムバージョンとして遼さんに再構築していただきました。柔らかいホーンの響きが印象的になっていて、全体としてはかなり抑制的でひそやかだけれど、同時に幻想的な広がりもある夜の景色が封じ込められました。 Lip Noise この曲の中で何を追求しようとしているのか分かり切れないまま、切実さが先行して形になった曲でした。「清/濁」「肉体/魂」といった二項対立的なものの間を見ようとする、あるいは統合しようとする中に、きっと繰り返している「透明」という言葉があって、作曲と編曲を通じてその輪郭をなんとかつかもうとしていました。録音やミックスも含めずっと細部までこだわり続けたし、アルバムの中でも一番身を削るような制作でしたが、Bialystocksの菊池剛さんはじめ皆様には最後まで向き合っていただき、この形で残せてよかった。今の自分にとって一番重さが乗っている曲です。 高台 よく知っているはずの街の、知らない美しい表情を思いがけず見た時、隠された宝を見たような気持ちになりました。それは同時に、そこに映る自分の中の隠された宝を見ていたのかもしれません。10代の頃の曲ですが、20代、30代、そしてもしかしたらその先も、ふと心が帰ってくるような曲なんじゃないかと思い、アルバムの最後に選びました。ピアノ以外の楽器が加わって、幼い頃から育ち見てきた郊外の風景が、映画音楽のように立ち上がっているように思います。