

2012年のデビューミックステープ『10 Day』で18歳のChancelor Bennett(チャンス・ザ・ラッパー)はインディー界のスターとなり、それ以降ファンはシカゴ出身の彼が成長していく様子をリアルタイムで見守ってきた。つまり、高校を停学中のストーナー(大麻愛好家)から、生意気な地元のヒーローへ、そして神を信じる家族思いの男性へと変貌を遂げる様子を。「随分若いうちに、大人として生きていた」と現在32歳のチャンスはApple MusicのZane Loweに語る。「ツアーに出て、世界を飛び回って、家族やビジネス、友人たち、いろんな人を支えてきた。まるで子役みたいなもんだよ。分かるだろ?」。彼のこれまでの道のりには、今や名作とみなされる3作のスタジオミックステープと、2019年の公式デビューアルバム『The Big Day』がある。後者には、79丁目出身の“リル・チャノ”が、夫や父親、そして大人としての役割をしっかりと担う姿が描かれている。 セカンドアルバムとなる本作『STAR LINE』の冒頭で「サプライズ!生き残った少年の登場だ」と宣言するチャンスは、6年前の彼とはもはや同じ人間ではない。その間に、2020年には長年のマネージャーとの不和による決別があり、2024年には5年にわたる結婚生活に終止符を打つと発表した。マーカス・ガーベイのブラック・スター・ライン(アフリカ回帰運動のための海運会社)にちなんで名づけられた『STAR LINE』では、チャンスは現実に真っ向から向き合い、自分自身の葛藤だけでなく世界が抱える問題も、彼らしい機知、胸に迫る表現、そして二度見してしまうような言葉遊びで描いている。「政治的にも、国際的にも、世界は大変な状況にある」と彼はLoweに語る。「そして、困難に立ち向かう道徳的な柔軟性と耐久力ってものが、まさに試されているんだ。あらゆるものが限界まで引き伸ばされているから」 チャンスは最近訪れたガーナやジャマイカの旅からインスピレーションを得つつも、『STAR LINE』に根ざしているのはあくまで彼の地元シカゴだ。そのシカゴの文化から、ディアスポラ全体に広がるブラックカルチャーへのつながりを見いだしている。「Speed Of Light」ではジュークのドラムが鳴り響き、「Tree」ではラスタファリアンのルーツをまとい、「Burn Ya Block」では未来的なダンスホールが、そして「Space & Time」ではアフロビーツのリズム、といった具合にそれぞれが共鳴しているのだ。彼は過去から現在のシカゴのアーティストたちとスポットライトを分かち合い、1990年代のヒーローであるDO or DIEから、若手のBabyChiefDoItまでを迎え入れる。さらに、愛されているローカルアンセムからマニアックな曲まで、巧みに引用も差し込む(通なリスナーなら、Jamila Woodsとのデュエット曲「No More Old Men」でBBUの「Chi Don’t Dance」の引用に気付くだろう)。そして、ソウルフルな「Back To The Go」では、チャンスは一連のつまずきを振り払い、荷物をまとめて故郷へと帰る。「あちこち回って/結局シカゴに戻ってきた(Been around the board/Now I’m back to the Go.)」と歌うのだ。