Live Laugh Love

Live Laugh Love

2015年の『I Don’t Like Shit, I Don’t Go Outside』がリリースされてから10年。Earl SweatshirtはOdd Futureの”もごもごとしたラップ担当”を卒業し、同世代で最もユニークなヒップホップアーティストの一人へと変貌を遂げた。初期の彼の特徴でもあった辛辣(しんらつ)で独自性のある作風や、一見気だるそうでありながら実は緻密なフロウは、時間をかけて変容し、いっそうカテゴライズしにくい領域へと踏み込んだ。2022年の『SICK!』や、その翌年にジ・アルケミストと共に制作した『VOIR DIRE』のような近作では、彼がシンプルさの可能性を模索し少ない言葉で多くを語り、作品を内省的かつ簡潔に保つ傾向が表れている。 本アルバム『Live Laugh Love』も例外ではない。多くの楽曲は非常に短く、Earlが選び抜いた前衛的なビートが生み出す空間に、鋭い一言や比較的ルーズなボーカルリフを詰め込んでいる。制作陣の中には彼と長く付き合ってきたプロデューサーも参加。例えばBlack Noi$eとNavy Blueは、それぞれ複数のトラックを提供しアルバムを支える。また、アルバムの中でアンダーグラウンドで注目を集めるChild Actorが唯一手掛けた楽曲「Heavy Metal aka ejecto seato!」は、どんよりとしたソウル感を持つ『ワイルド・スピード X2』へのオマージュになっている。それらの曲を除けば、残りはニューヨークを拠点とするアーティストTheravadaの手によるもの。Earlのファンなら『SICK!』の「Tabula Rasa」で彼の名前を覚えているかもしれない。アルバムの冒頭4曲は彼のビートで彩られており、「gsw vs sac」のうねるようなフィルター・ファンクから、「Gamma (need the<3)」のパーカッシブなビートまでが並ぶ。 とはいえ、誰がトラックを手掛けようと、『Live Laugh Love』の中心にあるのはEarlの型破りな魅力と、自由奔放な語り口だ。「INFATUATION」では比喩を料理のレシピのように混ぜ合わせ、濃厚な詩情をまぶした巧妙な言葉遊びを提供する。アルバムの中でも長めの楽曲「Live」では、“死を覚悟してまで主張を貫く(dying on a hill)”というアルバムで繰り返し登場するテーマを慎重に掘り下げ、その後は気分に合わせたビートの転調とともに下降していく。リリックの一部が伏せられた「CRISCO」で、断片的な物語が生々しい描写を交えて提示される一方、「WELL DONE!」では、他のラッパーには到底真似のできない方向へと挑発的にスタイルを誇示する。そしてラスト曲「exhaust」では、勤勉さへの姿勢と個人的な思いが交差する中、彼の言葉は関係の終焉と別れ際に残す静かな言葉との間を揺れ動く。そして時折エリカ・バドゥの声が添えられている。