Dreamstate

Dreamstate

Kelly Lee Owensがたどってきた音楽の旅路は、実に魅力的だ。彼女はノイジーなUKインディーポップバンド、The History of Apple Pieのベーシストとして活動した後、2017年にセルフタイトルのデビューアルバム『Kelly Lee Owens』をリリースして突然エレクトロニックな領域へと方向転換した。このデビュー作は、知的なプロダクションに、ウェールズ出身のシンガーソングライターである彼女の歌声が紡ぐメロディックなポップの装飾を見事に融合させたものだった。2020年の『Inner Song』と、続く2022年の『LP.8』はさらに未知の領域へと踏み込んでいき、特に『Inner Song』はレディオヘッドの「Arpeggi」のカバーやアートポップの巨匠John Caleのフィーチャリング曲まであった。とはいえ、4作目のアルバム『Dreamstate』がもたらす圧倒的な興奮には、これまでのどの作品も及ばないだろう。Owensの音楽は、どれほど抽象的な表現に寄っても常に身体を揺らす力を持っていた。そして、THE 1975のプロダクションの要となったGeorge Danielが主宰するレーベルdh2からの初リリースとなる本作では、脈打つシンセサイザーの広がり、トランスのテクスチャーから巧みに引き出されたみずみずしいリズムの展開、そして独特のサイケデリックなフレーバーから、彼女が本格的にビッグルームの領域へと足を踏み入れたことが分かる。 『Dreamstate』は、その本質において、まさに“ビッグ”なサウンドのアルバムだ。ケミカル・ブラザーズ、Bicep、そしてGeorge Danielといった、“何か”を感じたいと願う巨大なオーディエンスを導く術を知り尽くした面々が、プログラミングやプロダクションでゲスト参加している。一方で、サウンドにはOwensがこれまで得意としてきた、あのほのかな親密さもしっかりと息づき、彼女をJamie xx、Caribou、Floating Points、ハーイといったスマートなダンスポップの錬金術師たちと並ぶエレクトロニックポップの第一線へと押し上げている。 「Higher」の豊かで一気に高揚するサウンドは、血管を駆け巡るように激しく脈打つシンセラインに溶け込んでいき、「Air」では彼女のボーカルがネオン輝くハウスミュージックのサウンドスケープを彩る中で四つ打ちのリズムが力強く響き渡る。そして過去には謎めいた前衛的なサウンドに覆い隠されていたOwensのポップな感性が、本作ではかつてないほど鮮明に表れている。特に、ケイト・ブッシュの「This Woman's Work」を彷彿とさせる愛らしいため息のようなボーカルが印象的な「Rise」での駆け上がるアルペジオや、本作の中で最もストレートなボーカルポップソングといえる「Ballad (In The End)」からはっきりと聞こえてくる誠実さにそれが見て取れる。