Night Call (Deluxe)

Night Call (Deluxe)

オリー・アレクサンダーは、アルバム『Night Call』を作るまでにいくつもの変化を経験した。シンガーで役者でもある彼は2010年からポップトリオのイヤーズ&イヤーズのメンバーとして活動していたが、Russell T. Daviesによるエイズをテーマにしたイギリスの感動ドラマ『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』を撮影している間に、他のメンバーとの距離が取り返しのつかないほど離れてしまった。そしてご存じの通りパンデミックがそんな時に起きた。「とてつもなく大きな出来事が起こっている感じがして、その時点までに自分が作っていた音楽が、今の自分や外の世界に対して意味を持つとは思えなくなった」と、アレクサンダーはApple Musicに語る。「アイデアを見直して、自分が本当に作りたいものは何なのか、イヤーズ&イヤーズとは何なのかを考える必要があった」そうした疑問に答えるように届いたのが『Night Call』だ。本作はアレクサンダーがイヤーズ&イヤーズとして初めて一人で作ったアルバムである。そこでアレクサンダーはダンス、ディスコ、1980年代ポップが鳴り響くアフターファイブの世界へ頭から飛び込み、しばしば不気味な要素を融合させて自らが“スプーキーポップ”と呼ぶ音楽(「Crave」や「Immaculate」にそのサウンドが表れている)を作り上げた。また、アルバムの大半が2020年と2021年のロックダウン中に作られたことから、ダンスフロアを再び取り戻すことが主要なテーマになっている(「Starstruck」「Sweet Talker」)。しかし、そのインスピレーションになった1980年代の音楽と同様、今作の活気あふれるポップソングでは深い悲しみ(「See You Again」)や失恋(「Make It Out Alive」)が描かれ、そして多くの場合、アレクサンダーが親密な関係や欲望に対して抱く微妙な感情といった、痛みを伴うテーマも内包している。「このアルバムには、最高に楽観的な部分もあるけれど、困惑が表面化しているところもある」とアレクサンダーは言う。「でもそうしたいろんな違った感情を同時に感じられるところが気に入ってるんだ」。以下、アレクサンダーが『Night Call』を全曲解説する。Consequencesこの曲のデモを聴いた瞬間、「これがアルバムのオープニング曲だ」と思った。新たな一章の始まりを告げる、思い切った宣言みたいな感じがした。あのころはプリンスやスティーヴィー・ワンダーをよく聴いていて、「イヤーズ&イヤーズの曲に彼らの影響を本気で取り入れたらどうなるだろう」って考えていた。この曲では、面と向かっては言えない相手に対して、「君は苦しんで当然だ」って言ってるんだ。Starstruck田舎で1週間過ごしたことがあって、「Starstruck」はある晩の終わりに即興でできた曲だった。(プロデューサーの)マーク(Mark Ralph)が作っていたインストゥルメンタルがあって、自分とCoffee(プロデューサー/ソングライターのClarence Coffee Jr.)がそれにかぶせて一緒に歌い始めたんだ。あっという間にできた感じの曲だった。「イェイ、これから思い切り楽しむぞ」って、そんな堂々と宣言する曲は今までレパートリーの中になかったから、そこが気に入った。Night Callいかにもゲイっぽい感じの曲が欲しかった。当時自分が大好きだった曲はカジュアルな関係を歌ったものが多くて、それを他の言葉で言い換えてみようってみんなでふざけ合っていたことがあった。それが「Night Call」だったんだ。自分が欲しいものを分かってて、それを恐れず堂々と求める立場から歌詞を書いてみた。Intimacyこの曲は「Starstruck」と同じ週に書いた曲。ちょうど、親密な関係(intimacy)について語り倒していた時で、Coffeeが背中を押してくれたんだ。「そこを掘り下げるべきだよ。この曲のテーマはセックスだ。自分がどんなセックスをしたいのか、どんなふうに親密になりたいのかについて葛藤してる気持ちを歌うんだ」って。自分自身のそういう経験を歌ったのがこれなんだ。Craveずっと取り組んできたいろんな要素を一つの曲に集約して、本当に満足できる曲になった感じがする。長調と短調が入れ替わるアバの曲が頭にあって、「それにトライしてできる限り突き詰めてみて、楽しめるクラブソングなんだけど、同時に不気味な感じのするダンストラックの曲を作ってみよう」ってことになったんだ。変わった性癖を歌詞にして、それをポップソングに使うのが楽しかった。そこが面白い。Sweet Talker(with ギャランティス)「Sweet Talker」はこれまでとちょっと違う曲。アルバムに直球のダンストラックが欲しかった。ロビンのようなアーティストが作る曲に憧れていて、そこからインスパイアされた。クラブで流せるような感じの曲にとにかくしたかった。Max WolfgangとMark Ralphとの共作で、ギャランティスも参加してストリングセクションを加えてくれた。Sooner Or Later夢のような感じがする、夜に聴きたくなる曲を思い描いていた。男の人たちのことを夢見たり、これまでの恋愛関係を夢見たりしていた。ロックダウンの間、行ける場所といえば夢の中しかなかったんだ。衝動や目的が感じられる曲にしたかった。楽しい曲なんだけど、ハードなエッジが効いている。かなり不安な感じなのに希望もあるのは、自分がそういう人間だからで、本当にこの人のストーカーになるわけじゃないってみんな分かってるから。20 Minutesこれは2019年にロサンゼルスで作った曲。まだ前の恋愛を引きずってて、いろんな国でいろんな男の人たちと気まずくてかなり恥ずかしい出会いを繰り返してた。それで落ち込んでしまったことをテーマにした曲がたくさんできていた。でもカジュアルな関係がうまくいくときもあるって曲も一つ作っておきたかったんだ。Strange And Unusualアルバムの制作中に、それまで作ったどの曲とも違うものを作りたくなるときがある。「Strange And Unusual」はそんな気持ちから生まれた曲。Zero 7とかモーチーバみたいな、子どものころ大好きでよく聴いてた音楽を思い出した。僕は変わってて異常(strange and unusual)だってずっと言われてきたけど、この曲では「確かに変わってて異常だけど、美しいよね」って言いたかったんだ。Make It Out Aliveこれも2019年に作った曲だけど、もっとローファイだった。このバージョンには、ケイト・ブッシュの「Cloudbusting」を聴いたときのノスタルジックな感覚や多幸感がある。間違いなく一番エモーショナルな曲で、他の曲の大半が楽しみたい気持ちがテーマの曲だから、最初はアルバムに入れるのが嫌だった。「生きて抜け出せるのか分からない」っていう曲だから。でも(失恋すると)本当にそんな気持ちになるときがあるよね?See You Againこれは2020年の初めに亡くなったおばあちゃんのことを歌った曲。本当におばあちゃんっ子だったから、悲しみを乗り越えるのが大変だった。この曲を聴くとおばあちゃんを近くに感じる。とはいえ、おばあちゃんのことを歌ってると分かってもらいたくて作ったわけじゃない。他の曲の多くは、愛を失くした気持ちとか愛がどこにあるか分からない気持ちを歌ってるから、この曲は他のテーマにもうまく合ったんだ。Immaculateこれは「Sweet Talker」や「Night Call」と同じく、Max WolfgangやGeorge Reid、Mark Ralphと一緒に作った曲。「immaculate(完璧な、汚れのない)」という言葉が大好きで、基本的にそれを中心に生まれた曲だった。この言葉をスプーキーポップに合わせてみたかったんだ。Muscleこれはロサンゼルスで書いた曲。あそこに行くとボディビルダーズっていう昔ながらのジムに行くんだ。ジムのカルチャー、特にゲイのジムカルチャーにすごく魅力を感じる。ロサンゼルスでは、ウエストハリウッドの辺りやジムで見かけたゲイの人たちがとにかくムキムキで、「ワォッ」って感じだった。自分にとってジョージ・マイケルは偉大なインスピレーションで、彼が自らの性的な欲望に正直だったところにも触発される。ハウスミュージックを取り入れつつ、自分なりの陽気なゲイスタイルも加えたかった。Reflectionドラマチックに聞こえるだろうけど、この曲は一緒に破滅する運命かもしれない人と出会った時の不安から生まれた曲。2020年の秋から冬にかけて書いた。ちょうどロックダウン中で、本当に自分を見失いそうになった瞬間があったんだ。「何をしてるんだろう? どうしてそれをやってるんだろう? 一体何のためになるんだろう?」って。一人きりで自分のことを考えてばかりいた。曲の中にはそうした内省が表れている。それは、常に自分は誰なのか、自分のアイデンティティは何なのかを探し求めているからなんだ。A Second To Midnight(with カイリー・ミノーグ)すごく気に入ってるのに、どうしてもうまくいかない曲があった。カイリーが自分のアルバムのための曲を探してた時に、この曲を聴いて、「ちょっと手直ししてもいい? この曲で私と共演しない?」って言ってくれた。人生で最高の日だった! 彼女はまさにプロだけど、人としても素晴らしいんだ。Starstruck (Kylie Minogue Remix)世の中で、パンデミック中にカイリーに助けられた人はものすごく多いと思う。彼女はロックダウンの真っただ中に『DISCO』をリリースしてくれたんだよね。あのアルバムは本当に大好き。彼女とは数年前から知り合いで、ステージで一緒に歌ったこともある。「Starstruck」をリリースした時に、すごく気に入ったって言ってくれてたから、「この曲に合うのは誰だろう? 彼女なら完璧だ」って話になったんだ。まさか本当にイエスと言ってくれるなんて思わなかったよ。

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