Freezing

奥行きを感じさせるダークな声と豊かな表現力で時代もエリアもジャンルも異なる楽曲を歌いながら、一つのアルバムとして独創的な音世界を描き出している。イタリア系カナダ人のメゾソプラノ、エミリー・ダンジェロは、オペラ界のスターとして主要な歌劇場のステージに立つ一方、リサイタルやレコーディングで中世から現代までの多彩な歌曲を取り上げてきた。本作はドイツグラモフォンよりリリースする2作目のソロアルバムであり、彼女はここでもジョン・ダウランドからコダーイ・ゾルターン、フィリップ・グラス、ランディ・ニューマン、アメリカのオルタナティブロックバンド、ウィーンの楽曲まで、あらゆる境界を超えてさまざまなレパートリーを歌い上げている。また、一つ一つの曲の魅力を存分に引き出しながらアルバムに統一感を持たせるユニークなアレンジが、本作の独自性と魅力を高める重要な要素となっていることも見逃せない。このアルバムのアレンジは、声楽とギター、声楽とピアノ、あるいは声楽とピアノとギターといった小さな編成をとっており、冒頭を飾るフィリップ・グラス作曲、スザンヌ・ヴェガ作詞のタイトルチューン「Freezing」は、声楽とピアノ、エフェクトを効かせたギター、ベースによる演奏で、完全にジャンルレスなパフォーマンスとなっている。そして、このようなサウンドを背景にしたエミリー・ダンジェロの歌唱は、一段と輝きと説得力を増している。