ソロ名義では『EACH TIME』以来32年ぶりとなった本作は、生前の大滝詠一が他アーティストに提供した中から未発表だったセルフカバーを集めたもの。タイトルは1978年発表のベスト的な編集作『DEBUT』に由来しているが、本作はそれまで存在すら不明だったテイクも多数収録されている。「熱き心に」は、小林 旭の録音に立ち会った大滝が、彼が帰った後のスタジオで吹き込んだと思われる。「怪盗ルビイ」は小泉今日子とのデュエットも知られているが、本作では大滝のみの歌唱を収録。シャネルズ（のちのラッツ&スター）と薬師丸ひろ子への提供作は2曲ずつ収録され、中でも「星空のサーカス」は大滝1人の多重録音によるコーラスが圧倒的だ。松田聖子のビッグヒット「風立ちぬ」は1981年12月のライブ録音から。さらに吉田美奈子やシリア・ポールの歌唱で有名な「夢で逢えたら」は、大滝の歌にストリングスを絡めたミックスで収録している。各曲が制作された時期や環境もまちまちではあるが、ナイアガラのファンも各アーティストのファンも大いに感じ入るところがあるだろう。ソングライターとしての大滝の魅力に触れることができる作品集。