キャロル・キングやローラ・ニーロ、ジョニ・ミッチェルらに代表される70年代アメリカのシンガー・ソングライター作品を思わせるような、リラックスしたフォーキー・サウンドと美しいメロディ、そして、のびやかでありながら、同時に芯の強さも感じさせるボーカルと歌詞の世界。1973年にショーボート・レーベルの第1弾としてリリースされたこの吉田美奈子のデビュー・アルバムは、女性アーティストがアーティスティックに、自然体で自らの個性を表現するようになった時代を象徴する作品だ。プロデュースは彼女自身と吉野金次、そしてはっぴいえんどで日本のロック史に金字塔を打ち立てた細野晴臣、バック・バンド/サウンド・プロダクションはティン・パン・アレイの母体になったことでも知られる細野晴臣、松任谷正隆、林立夫、鈴木茂によるキャラメル・ママという強力なメンバーが集結し、吉田美奈子という希有なシンガー・ソングライターの才能を最大限に引き出している。まさにタイムレスな作品。