「SYUUU / ドライブ」リリース記念プレイリスト〜出会いと別れ編〜

「SYUUU / ドライブ」リリース記念プレイリスト〜出会いと別れ編〜

ニューシングル『SYUUU / ドライブ』のリリースを記念して、Base Ball Bear初となるオフィシャルインタビューを掲載したメンバー選曲のプレイリストを公開。 (前編) ──2020年は言うまでもなく自宅にいる時間が長かったと思いますが、小出くんはその時間の中でどのように曲作りと向き合っていたんですか? 小出 リリースが何も決まってない段階から、とりあえず曲を作っておくか、と思って。でも、漠然と曲作りするのは苦手だし、何か面白い作り方、テーマはないかなと思ったんですね。それが2020年の夏くらい。徐々にバンドで配信ライブも含めたリハに入るようになっていたけど、仕事以外では基本的に外に出なかったので、じゃあ日記的に曲を書いていこう、と思ったんです。1日1ネタ作るということを自分にテーマとして課して。 ──それはリフでもなんでもいいから、ネタを作るという? 小出 そう。なんでもいいんです。でも、まずは主に音に関するネタを1日一つ作ろうと。調子がいいときは2つ、3つできたりして。歌詞のアイデアが思いついたら、それもメモをとって。今回のシングルの制作に入ったのが11月くらいだから、3、4ヶ月近く毎日そういうことをやってたんですね。結果的にアイデアとしてリフやメロディが200個くらいできて。で、それらをこのシングルのリリースが決まった段階で「これは使えるな、こうしたらこういう曲ができる」という検証をして、それをバンドに持っていって曲を完成させていったんです。今もそれらのネタを精査しながら制作を続けてますね。 ──その中で、「あ、今の自分からこういうフレーズやメロディが出るんだ」というフレッシュな発見はあった? 小出 あった、あった。それは今回の2曲ではないけど、今着手してる曲のアイデアの中で「あ、これは意外ですね」みたいなものはありますね。 ──小出くんはそもそも映画を筆頭にインプットの量がハンパない人ですが、2020年からこういう世界になって自分がインプットする他者の創作物の捉え方、あるいは創作物が刺さる角度が変化したとか、そういう実感はありますか。 小出 それはすごくいい質問ですね。俺自身それに気づいて「うわっ!」ってなったことがあって。結局、今の現実が創作を上回りすぎていて、2020年は創作物に興味がなくなったんですよ。新作は減りましたけど、映画も公開されていたじゃないですか。話題作もそれなりにあったし。いつもならそこでテンション高く劇場鑑賞していたけど、前提の興味が全然湧かなかったんですよね。現実を追うことが大変で。 ──なるほどね。 小出 社会の価値観も劇的に変化している中で、さまざまな問題が露呈し、分断もますます広がった。そういう現実を目の当たりにする中で「映画なんて観てられないな」と思う気持ちが強くなってしまって。 ──小出くんにとっては一大事件ですよね。 小出 一大事件でしたね。こんなに映画や漫画が好きなのに、全然興味が湧かなくて。「芸術というものがこの現実の中でどうあれるか?」ということもすごく考えたし。それについて考えるのが忙しくて映画や他の人が作る音楽を聴く暇がなかった。 ──それは結果的に創作物を生み出すことを生業にしている自分にも返ってくることじゃないですか。 小出 そう、だからこそ毎日、日記的にネタを作っていたんです。 ──その根本的な問題と対峙するにはそうするしかなかった。 小出 そうそう。今、バンドでどういう音を鳴らしたいのか、自分からどういうグルーヴ感、コード感、メロディが出てくるかということを記録する。それが、2020年を体感するということでしたね。 ──その創作物に対するある種の諦観は今も持続してるんですか? 小出 いや、ちょっと持ち返してきましたね。それはなぜかというと、映画だったら2020年以降の価値観にフィットする作品がすごく増えてきてるのが大きいです。作品はコロナ以前に作られているだろうから偶然か、あるいは元々あった価値観の変移がコロナで加速して、結果的にフィットしてきたのか。でも、音楽の聴き方はそこまで変化してないですね。日本の音楽シーンに関しては星野源さんが一番すごいと思うのも変わらない。 ──すごいよね。最新曲の“創造”も、タイアップのお題をしっかりクリアしながら、楽曲全体で「今の時代に必要なのは個々人が表現する行為なんじゃないか?」と楽しく訴えるような聴き応えがあって。 小出 あの曲もすごかったですよね。源さんじゃないとあんな仕事ぶりはできないし、あんな曲は作れないと思う。源さんはだいぶ先を行ってるなと思います。“SUN”(2015年5月リリース)を聴いたときは「こりゃまいったぜ!」って本当にのたうち回るくらい悔しかったけど、“創造”を聴くともう、のたうち回りもしない(笑)。真顔で聴いちゃいますね。ああいう立場で物事を考えて、向き合って、かつ表現できる人じゃないと作れない曲だと思う。“うちで踊ろう”も、一回目の緊急事態宣言後にあのスピード感であの曲が出てくるのが信じられなかった。素晴らしいと思う。 ──自分もそういう領域に行きたいとは思わない? 小出 う~ん……近い席を狙おうとは思わない。源さんみたいな戦い方は自分にはできないだろうし。でも、自分なりの戦い方が何かあるとは思ってる。20年もサバイブしてると、気づけば自分たちと並走してきた人たちが減ってしまって。ただ自分の席に座っていただけなのに。そのうえで、このバンドサウンドを貫くだけじゃなくて、トレンドに対してどういう距離感でいられるかとか、そういうことはつねに考えてる。勝手に、源さんにシンパシーを感じる部分も多いんですよ。源さんは源さんの役割とポジションの中で“創造”のような曲を作ってると思うし、自分はロックバンドとして、どこまでやれるかということをいつも考えてますね。 ──海外の音楽に対してはどう? 小出 海外の曲もそれなりに聴いてはいたけど、あまり興味は湧かなかったかな。海外の音楽のトレンドと今の日本のアーティストたちが追いかけてるトレンドがけっこう一致してるから。もちろんサウンドプロダクションのクオリティや、音像も含めたレベルの違いはあるけど、手法は近いというか。そういう意味でもロックバンドの曲は少なすぎるよね。今みんながやってないから、自分が聴きたいものを自分で作ってるのかなとも思う。それは非常に楽しいです。現在進行系で作ってる曲で言えば、ギターのカッティングとドラムとベースがブンブンいわせてるのみ。「クゥ~! 外で聴かねぇ! 楽しいぜ!」みたいな(笑)。「シンセが入ってこないんだぜ!?」という。 ──「同期もいらないんだぜ?」って。 小出 ワイルドだろ?(笑)。やっぱりBase Ball Bearって(シーンの潮流を)先読みしながらやってきてるバンドなので。グルーヴ指向で、メロウで、オシャレな感じで、意識的にも無意識でも家のオーディオで聴かれることを前提にした曲が増えてきてると思うから、それなら自分はギターをジャーン!って弾こうと思うし、いつか「ほらね」ってなると思ってるんですよ。 ──その指針がハッキリしてる。 小出 そうですね。今までやってない感じの曲もいっぱいできてるので。バンドのテンションは高いですね。 ──歌詞に関してはどうですか? 小出 う~ん……。 ──今の世の中の劇的な変化、その起因となっている問題の本質については、小出くんがBase Ball Bearの楽曲で歌ってきたことと離れがたく結びついてると思うんですよ。シンプルに言えば、「想像力がない人はマズいよ?」っていう。 小出 大丈夫ですか? っていう。 ──それがリアルになった今、何を歌いたいか、自分の頭の中にありますか。 小出 引き続き──いや、もっと地に足がついてるかもしれないですね。だけど、今までの「地に足がついてる」と、これからの「地に足がついてる」を考えるとでは、より「その地面はどうなの?」ということを疑わなきゃいけないじゃないですか。今までは感覚的に「地に足がついてる」と言っていたけど、「じゃあその地面がどういうものなのか考えたことあるかい?」っていう。それを加速度的に「ほら、考えてないからこうなったじゃん、今」って痛感させられたのがこの1年間の世の中の動きなんだろうなと。僕が感覚的に捉えていた気持ち悪さとかイヤだなと思っていたことの地面に少しずつ、みんなの目もいってるのかなって。みんなが見てることと、自分が感じていたキモさがちょっと交わっていくのかなという気がしないでもない。 ──あとは、もっと自由な筆致で歌詞を書いてもいいというモードになってるのかなとも思うんですよね。命題みたいなものに執着しなくてもいいんじゃないかという。 小出 命題の抽出の仕方が変わったという感じかな。今までは命題に対して真正面から書いていたけど、それを続けてたら「俺、選手生命が短くなるかも」と思って。命題について正確に描写する技術ももちろん必要なんだけど、もっと別のものに置き換えたり、バラバラにして組み換えて再構築する技術だったり、よりポエムとしての側面をもっと自分で耕していきたいなと思ってますね。『C3』のときはわざと命題を直視していたんですね。『C3』はスリーピースバンドになってからのBase Ball Bearの基礎編だから。これからは応用編に入っていく。『C3』の作詞がけっこうしんどくて消耗したんですよ。で、今はもっと──もちろんテーマがあるものを書きたいけど──そこからもっと想像することを楽しめてるというかね。メッセージを何かに置き換える変換のプロセスも楽しめてます。 インタビュー&テキスト 三宅正一 ※後編に続く <メンバー選曲> 小出祐介 Rupert Holmes「Speechless」 TWICE「Feel Special」 Trespassers William「Vapour Trail」 Rufus「Circles (feat. Chaka Khan)」 関根史織 坂本慎太郎「君はそう決めた」 ふくろうず「ごめんね」 the brilliant green 「good bye and good luck」 堀之内大介 太陽がまた輝くとき「高橋ひろ」 悲しみよこんにちは「斉藤由貴」 きかせて(feat.Lafuzin)「BRIAN SHINSEKAI」