Base Ball Bear「DIARY KEY」Specia Playlist Vol.1

Base Ball Bear「DIARY KEY」Specia Playlist Vol.1

ニューアルバム『DIARY KEY』の発売を記念して、メンバーそれぞれのオフィシャルソロインタビューを掲載したスペシャルプレイリストを公開。 「20年間聴き続けた曲」をテーマにメンバーそれぞれが選曲したプレイリストと共にお楽しみください 結成20周年を迎えたBase Ball Bearのニューアルバム『DIARY KEY』が完成した。ストロングかつストレンジなサウンド、独立したポピュラリティに富んだ旋律を追求する歌メロ、二重三重の意味合いを紐解けるレトリックをシンプルな筆致によって成立させてみせた歌詞。スリーピースバンド・Base Ball Bearの一つの到達点がここにある。20周年の2021年に本作が生まれた数奇な必然について、メンバーそれぞれに語ってもらったインタビューをお届けする。一人目は、関根史織(Ba)。 ──スリーピースバンドとしてのサウンド、リズム隊としての強度という意味でもかなりの手応えがあるんじゃないですか? 関根 手応えありますね。どんどん上手くなっているという実感があるし、ベースを弾くのもどんどん楽しくなっているという感覚があります。まだまだいけると思いますし。 ──なんでそうなれてるんですかね? 関根 ここ2年くらいに関して言うと、Base Ball Bear以外でも演奏する機会が増えて。最近だとthe pillowsの山中さわおさんのソロ作品に参加させてもらったり、ツアーにも帯同して。あとは、ふくろうずの内田(万里)さんの作品とライブにも参加して。1曲だけですけど、去年はあいみょんさんの「マシマロ」という曲のレコーディングにも参加しました。人と演奏してつかんでいく感覚と、バンドに戻ったときにある、いわずもがなの安心感。それが自分にとっていい効果を生んでるような気がします。 ──バンドが20周年のタイミングで一人のプレイヤーとしてもそう言えることってとても幸福ですよね。 そうですね。この先もこういう感覚を忘れたくないですね。これから伸び悩んだりする時期もきっとあると思うけど、忘れたくないです。 ──関根さんのベースのスキルがどんどん向上していることが、Base Ball Bearのサウンドを鉄壁なものにしているのは間違いない。 そう言ってもらえてよかったです。前にもインタビューで言ったような気がするんですけど、長らく自分がバンドの足を引っ張ってるという感覚があったので。でも、今は作品を作る度にスリーピースバンドとして3本柱がしっかり立っている感覚があるのでそれはすごくよかったなと思います。『DIARY KEY』も胸を張れるアルバムになってよかった。 ──どんなところにそれを感じてますか? 関根 20年活動していてもBase Ball Bearはちゃんと若かったころのキラキラしたムードを失っていないと思うんですね。今回は特にそういうギターロック的な部分にも自信を持って演奏できていると思います。 ──どんどん比較対象のないバンドになっていることを浮き彫りにしているアルバムでもあると思います。 関根 そうだったらいいなと思います。比較対象がないままこれから20年でも30年でも続けていけたらいいなって。それでいて今も学生のときから一緒にいる感覚をずっと失っていないと思うので。個人的なことで言うと、前作『C3』はベースから曲を作ったり、ベースがどんどん上手くなってる感覚を表現しようとしたんですね。その「ベースを聴け!」という感じもやりがいがあって楽しかったんですけど、『DIARY KEY』は3人で演奏していればそれでいいという感覚があって。「私たち3人が演奏していればBase Ball Bearになるよね」という自信が本当にあったのでシンプルに演奏してる曲も多いですね。年齢とキャリアを重ねると、どんどん大人っぽくなったりしてしまうものだけど、大人っぽくなりすぎないでロックバンドならではのピュアな子どもっぽさを失いたくないと思いました。 ──それは外仕事を通じて感じることでもあるだろうし。 関根 それはすごく思いました。特に自分はテクニカルなタイプのベーシストではないし、求められてることが大人っぽい演奏じゃないと思うんですね。だからこそ、ロックバンドの意義というか、3人で演奏しているだけで素敵になれることの大切さをどんどん強く感じるようになっていきましたね。 ──掲載順は逆になるけど、さっきホリくん(堀之内大介/Dr)にインタビューしたときに「Henshin」のレコーディングで関根さんから「あんまり上手く叩かないでほしいと言われた」と言ってました。 関根 ホリくんはやっぱり上手なんですよ。それで、レコーディングのときに上手すぎるとこの曲の面白味が減ってしまうと思ってそれを伝えたんです。だからといって下手に演奏してほしいということではないんですけど。そこはロックバンド特有のニュアンスがあって。前の私はそのニュアンスをわかっていなかったし、自分からそういう提案はできなかったと思います。実際に技術的にも足りなかったし。 ──『DIARY KEY』はアルバム全体としても単曲単位でも一聴するとシンプルに聴けるんだけど、サウンドに耳を澄ましていくとストレンジな要素がふんだんにあって。そのサウンドの性格もまたスリーピースのすごみを際立たせていると思います。 関根 そう思いますね。「悪い夏」とかは「とにかくアンバランス感を大事にしたい」という、こいちゃん(小出祐介/Vo&Gt)の要望を受けて、きれいにまとめすぎないように意識したり。あと「_touch」はもう全員の演奏が超上手くいきましたね。 ──「_touch」は個人的にも白眉です。ディープなグルーヴが素晴らしいですよね。 関根 はい。こういう演奏を記録できた喜びがありますね。 ──あらためて、2020年から世の中が激変していく中で、一人のミュージシャンとしてどんなことを考えていましたか? 関根 私はミュージシャンだし、ライブの現場やスタッフ、ライブハウスも含めてライブに携わるすべてが好きなので。それを守りたいという思いがあったし、ライブをすることで批判されたり自粛ムードになるのは寂しかったですね。チケットの払い戻しや会場のキャンセル料などすごい額の負債を抱えている人なども周りにいたりして。 あと、stico(関根のソロプロジェクト)は基本的に自分でライブハウスの人と連絡してブッキングのやり取りをしてるので、ライブハウスの現状も目の当たりにしました。そういうことは知ろうとしなければ知れない世界だし、各々に各々の正義があって。何が正しいという話でもないから、私自身は何かを批判することはやめようと決めて、できるかぎり音楽と向き合うことを心がけました。家でベースを弾くこともそうだし、サポート仕事も含めて。自分のモチベーションが消えてたまるかという意地もあったし。 ──精神論めいちゃうけど、そういう経験も関根さんをベーシストとしてさらに強くしているかもしれないですよね。 関根 自分で考えて物事を決めることができるようになったのかなと。 ──2021年にこのアルバムを作れた意義は関根さん個人としても大きいですね。 関根 そうですね。こういう手応えのある作品を2021年に記録できてよかったです。コロナ禍になって悲しい思いや寂しい気持ちになることが多かったけど、悲壮感に浸りたくなくて。だから誰かがライブをやっているのを見ると私はうれしくなったし、その人たちが元気そうだとすごくホッとします。いつも通りの姿を見せてくれるのがうれしいので、私もそうありたいなと思ってます。次のツアーでもいつも通りのBase Ball Bearのワチャワチャしたムードとかを素直に見せたいですね。無理に元気ぶるでもなく。 ──このアルバムを体現するツアー、きっとものすごい充実感を覚えるのではないかと思います。 関根 ツアーをすごく楽しみにしてます、私。本当にすっごい楽しみです。ひさしぶりに行く場所もあるし。まだツアーの準備が始まったばかりだしセットリストも決まってないのでなんとも言えないですけど、私個人としては『DIARY KEY』が軸にありつつ、懐かしい曲もやりたいと思ってます。早くライブで「ひさしぶり!」ってみんなに言いたいです。 インタビュー&テキスト 三宅正一

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