MUNAは、自分たちのポップソングが持つ力強いメッセージ性に自覚的なバンドだ。2013年、大学時代に出会ったKatie Gavin（Vo）、Josette Maskin（G/Vo）、Naomi McPherson（Key/G/Vo）によってロサンゼルスで結成。デビューアルバム『About U』は1980年代のニューウェイブからの影響を色濃く感じさせる作品で、高揚と憂鬱（ゆううつ）のはざまでアップダウンを繰り返すシンセサウンドを、MUNAは“ダークポップ”と自称した。そのダークさの背景にあったのが、ジェンダーやレイシズムなどポリティカルなイシューにもちゅうちょなく切り込んでいく歌詞の切迫感だ。受け入れ難い現実から目を背けない姿勢は2作目『Saves the World』でも健在。ただしサウンドはよりオープンマインドに解き放たれたものとなった。2021年にはフィービー・ブリジャーズをフィーチャリングした「Silk Chiffon」で、アコースティックな新境地を開拓。バンドのスピリットさえ揺るがなければ、サウンドはしなやかに変容していけるということだろう。