

哲学者のような思慮深いまなざしを持つシンガーソングライター、折坂悠太。平成元年に生まれた彼は子ども時代をロシアやイランで過ごし、多様な文化に触れる。帰国後は千葉を拠点に2013年ごろより音楽活動を始め、2018年、自身が生まれて生きた平成という時代を刻んだセカンドアルバム『平成』を発表。フォーク、ジャズ、ブラジル音楽などを織り交ぜたハイブリッドな音楽性に、日本的なノスタルジアをにじませる独特の作風が高く評価され、平成の終わりを象徴する重要作となる。2020年以降は、個人の内面を巡る問いを真摯(しんし)に続け、2021年にアルバム『心理』を発表。さまざまな問題や価値観が交差する社会で、安易に結論を急ぐことなく、思考を重ねるプロセスの重要性を伝えた。ひそやかに日々を紡ぐ生活者の息吹を伝える彼の歌は、変化が激しい時代においていっそう存在感を増している。