

芸術や思想の自由な解放を謳ったロマン主義の精神に基づいて、古典派音楽を多彩に発展させた19世紀のロマン派音楽。それが世紀の後半に入ると、独墺圏ではリストやワーグナーの登場によって、古典派によるソナタ形式や、全音階による調性の崩壊を導くきっかけになった後期ロマン派の音楽が台頭する。中でも、ワーグナーが1850年以降に完成した傑作オペラの数々は、音楽語法や芸術思想の面でヨーロッパ全土に大きな影響を与えることになった。音楽と舞踏と言葉を融合した彼のオペラは楽劇と命名。代表作の「トリスタンとイゾルデ」で半音階を極限まで推し進め、シェーンベルクらの12音技法(無調音楽)への扉を開いた。