tuki.

tuki.が初めて動画投稿サイトに弾き語りの動画をアップした時、彼女はまだ13歳だった。SNSの普及により驚くべき才能が次々と現れるようになった2020年代においても、その早熟な才能は驚きをもって受け入れられた。少女らしいみずみずしさをたたえながら、感情の機微を鮮やかに表現する歌声に人々は魅了され、彼女のことをもっと知りたいという声は日に日にふくれあがり、SNSのフォロワー数は無名のミュージシャンとしては異例の多さを誇った。そして2023年の夏、tuki.はまだタイトルも付いていないメロディをギターで弾き語り、動画投稿サイトで発表する。なめらかで少しアンニュイな響きを持つそのメロディはたちまち人々の心を捉え、フルバージョンを聴きたいという声が次々と寄せられた。しばらくしてその曲名は「晩餐歌」であることが明かされ、2023年9月にtuki.のデビュー曲としてリリースされた。なお、レコーディングの費用はtuki.の父親から出世払いとして出してもらったという。 「晩餐歌」を制作過程から見ていた人々は待望のリリースに喜びの声を上げ、Apple Musicのトップソングランキングで1位を獲得するなどチャートを席巻した。tuki.が卓越したソングライティングセンスとパフォーマンススキルを持っていることは疑いようもないことだが、彼女の才能をさらに大きく開花させたのはリスナーだったと言えるだろう。リスナーたちはtuki.の才能をいち早く見つけ出し、シェアによって期待感を表明し、tuki.はその声に応えて珠玉のデビュー曲を生み出した。この濃密な関係性は2020年代ならではのものであり、tuki.はこれからも彼女の歌を求める人たちと共に未来を作っていく。