誰もが認めるマンドポップの帝王であり、2003年にはTIME誌でアジアポップのキングとうたわれたJay Chou。だがそうした敬称も、彼の特徴を捉えるには物足りない。シンガーソングライターで数々の楽器を操るJay Chouこと周杰倫は、1979年に台湾林口区で生まれ、音楽教師の母親から音楽の手ほどきを受けた。早いうちから息子の才能を見抜いた母親は、貯金を崩して息子にクラシックピアノとチェロを習わせた。14歳の時に両親が離婚すると、Chouは音楽に癒やしを見いだし、歌や作曲、数々の楽器の演奏を学んだ。制作スタジオでの勤務経験から音楽スキルにさらに磨きがかかり、2000年にはデビューアルバム『杰倫』をリリース。情感的なポップロック、ラップとR&Bの巧みな融合、そしてロマンティックな歌唱力で、このアルバムは瞬く間に一世を風靡（ふうび）した。2008年までは1年に1作の精力的なペースでアルバムをリリースしていたが、2010年代にはスローダウンして俳優業と監督業に傾倒。2011年にはハリウッドの超大作『グリーン・ホーネット』に出演した。マンドポップはK-Popほどの世界的な知名度を得るには至っていないが、それでもChouは中国本土や香港、シンガポール、マレーシアなど各国で大きな存在であり続けている。彼の一挙手一投足は人々の注目を集め、2020年にはキューバ音楽にインスパイアされたシングル「Mojito」が大ヒットするなど、音楽面でも革新を続けている。