女王蜂
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女王蜂

女王蜂について

心の傷も、鬱屈した思いも、精神のよどみも……。その全部に向き合い、全部を吐き出すことで、何もかもを浄化してくれる音楽。グラマラスで派手なイメージが強いバンドではあるが、女王蜂の本質は、そんな人間の深淵部に及ぶほどの表現世界にこそある。

フロントを張るアヴちゃんのカリスマ性は圧倒的で、その影響力は音楽界を超えて広がっている。きらびやかで妖艶、強烈にしてディープ。ボーカリストとしては高音から低音までを歌い切る表現力を持ち、また、ミュージカルでの舞台出演の経験もある才人だ。このアーティストの鋭敏さは、バンドの音楽だけでなく、発言や行動、ファッションやアート的な感覚からもうかがうことができる。女王蜂は2009年に神戸で結成され、2011年にメジャーデビューしたが、そのころからアヴちゃんは明らかに他の誰にもない輝きを放っていた。なお、この2011年は初期の代表曲「デスコ」が映画のメインテーマ曲に使用され、劇中にバンドとしても出演し、女王蜂がサブカルチャーの界隈で一躍注目されるきっかけの年となった。またこの曲はファンも一緒に“ジュリ扇”を振るのが定番で、当時の彼女たちの音が“ディスコ歌謡”と称される端緒となったナンバーでもある。

メジャー進出した女王蜂は、濃密な楽曲の制作、シアトリカルな演出によるライブなど、怒涛(どとう)の勢いで活動を繰り広げる。ビデオ制作や写真撮影においてもメイク、スタイリング、さらに装飾物などもメンバー自身が手掛け、それによってこのバンドに関係するものはどんな作品においても女王蜂としての世界観が強烈に貫かれている。ただ、この徹底ぶりはバンドそのものに軋(きし)みをもたらす側面もあり、やがてメンバーの脱退などが続いたことで活動を休止した時期もあった。

この時期にアヴちゃんは名うてのミュージシャンたちが集まったユニット、獄門島一家で活動する。その経験がいい方向に作用したのだろう。2015年に新体制で活動を再開した女王蜂は、ポップでカラフルな感覚に接近。シングルでリリースした「ヴィーナス」、そして4作目のアルバム『奇麗』は新たなバンド像を提示する作品となった。そして音楽的にはヒップホップやクラブ、ダンスミュージックなどを意識し、突き抜けたサウンドを聴かせるようになる。

ここからの女王蜂は、映画やテレビアニメなどのタイアップにも精力的に応えていく。「火炎」や「聖戦」、さらに「BL」などは生まれ変わったバンドの代表的なナンバーだ。こうして快進撃は加速し、2021年2月には初の日本武道館でのワンマンライブを2日間成功させた。

洗練されたサウンドによって、ポップな魅力も見せる女王蜂。しかし何事にも媚びない、どこか孤高なバンド像は常に保たれている。いかに親しみやすいメロディを歌っても、アルバム中の何曲かには必ず心のひだに触れるような深みを伴う曲があり、今日もどこかでその歌に救われている人が必ずいるに違いない。そしてその揺るがない姿勢こそ、このバンドたる美しさである。

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