ヴィクトリア・モネ

ヴィクトリア・モネが楽曲提供した中でも、特に2010年代後半にアリアナ・グランデが歌って大ヒットした「thank u, next」、そして“I want it / I got it”のリフレインが印象的な「7 rings」の2曲が示すのは、彼女にはセルフエンパワーメントを短くキャッチーな言葉にまとめる技があるということだ。とはいえ、Apple MusicのUp Nextアーティストにも選ばれたモネが世に出てくるまでには少々時間がかかった。1993年にジョージア州で生まれ、カリフォルニア州サクラメントで育ったモネ（本名Victoria Monét McCants）は、2009年にポップ／R&Bプロデューサーのロドニー・ジャーキンスによって結成されたガールグループのメンバーに選抜されたのを機に音楽活動を始めた。このプロジェクトは頓挫したが、すぐに彼女は他のアーティスト（Nas、T.I.、フィフス・ハーモニー、アリアナ・グランデ）に曲を提供することで生計を立てられるようになり、その一方で2014年から2018年の間にはジャネット・ジャクソンの野心的なポップやSadeの官能的な雰囲気を思わせるEPを4作リリースした。モネが一人のアーティストとして踏み出したのは2019年になってからだ。ブラック・ライブズ・マター(BLM）運動や、バイセクシャルとしてカミングアウトしたことから力を得て、彼女の曲作りはレベルアップした。そして彼女が共作したヒット曲の数々が世界中の女性に元気を与える中、モネは「Ass Like That」をリリース。みずみずしいファンクソウルポップのその曲は、モチベーションの高い“ボディポジティブ”のアンセムとなった。そしてその曲も収録した2020年の華麗なR&Bアルバム『JAGUAR』について、彼女はApple Musicのインタビューで、「力を自分たちの手に取り戻すために、女性同士で集まった時に考えたり話し合ったりしていることを伝えるため」に作ったデビューアルバムだと語っている。寛大にも彼女はその会話に男性も迎え入れ、「Experience」ではカリードとSG Lewisをフィーチャー。愛のテーマにニュアンスを持たせる彼女の能力が際立っているだけでなく、そのディスコサウンドには、過去の音楽要素を使ってより急進的な未来のメロディを作り上げるという新たな才能が表れている。