ロシア出身の指揮者ワシリー・ペトレンコは、主たる活躍の舞台であるヨーロッパのオーケストラに、並々ならぬ活力と高い意欲を注いできた。ペトレンコは、2006年から2021年の15年間にわたってロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務め、2013年からはオスロ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を兼任。2021年からはロンドンの名門、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務めている。彼はこうした活動の中で、ショスタコーヴィチやプロコフィエフをはじめとするロシアの作曲家たちの熱気に満ちた楽曲との相性の良さを示してきた。1976年にレニングラード（現在のサンクトペテルブルク）で生まれたペトレンコは、カペラ少年音楽学校とサンクトペテルブルク音楽院で研さんを積む。1994年から1997年まではサンクトペテルブルクのオペラとバレエのための劇場であるミハイロフスキー劇場の専属指揮者を務めたが、西洋のアンサンブルに魅了されていた彼は、客演指揮者を経て、2006年にロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者の座に就いた。リヴァプールは強豪サッカーチームの本拠地として知られているが、ペトレンコはこの町で、コンサートの観客数増加や、オーケストラの財政を改善するなど、重要な役割を果たしていく。ペトレンコは同楽団と共にショスタコーヴィチとチャイコフスキーの交響曲全集を録音し、高い評価を獲得。イギリス市民権を取得した時にはエルガーの作品をレコーディングして、新たな船出をアピールした。また、教育活動にも注力する彼は、2015年以降、European Union Youth Orchestraの首席指揮者も務めている。