100 Best Albums
- 1971年5月21日
- 9曲
- United · 1967年
- What's Going On · 1971年
- Midnight Love & The Sexual Healing Sessions · 1982年
- Let's Get It On (Remastered 2003) · 1973年
- What's Going On · 1971年
- In the Groove · 1968年
- Throwback Tunes: 70s · 1977年
- How Sweet It Is to Be Loved By You · 1965年
- Diana & Marvin · 1973年
- Sexual Healing - Single · 2013年
必聴アルバム
- 邦題は「離婚伝説」。元妻との離婚の慰謝料稼ぎのために作られたという背景もあり、リリース当時はずいぶんと酷評されたようだ。しかし、ディープハウスやデトロイトテクノを経過した耳で接すれば非常に興味深い作品となる。「I Want You」で獲得した音楽性を発展させた、艶っぽく物憂げなマービン流ジャジーファンクが聴ける"裏"ベストアルバム。シングルカットされた"A Funky Space Reincarnation"は、彼とPファンクの邂逅(かいこう)といった感触の8分以上にわたるファンクジャム。"You Can Leave,But It's Going To Cost You"などで聴けるトリッピーな感覚も本作の特徴で、ラフな質感のサウンドが逆に生々しく、本作の密度を高めているようだ。
- 艶っぽいマービン・ゲイのヴォーカルと、それを際立たせるリオン・ウェアのサウンド&プロデュースによって生み出されたソウル史上、最も官能的なアルバムの一つ。表題曲は、湿度の高いシルキーなグルーヴに、時にすすり泣き、時に狂おしくシャウトする彼のヴォーカル/コーラスが幾重にも重ねられたドラマチックなナンバー。ほかにも同系統の"All the Way Around"など、このめくるめく音世界に耽溺したいと思わせる、甘く切ない魅惑的なナンバーが並ぶ。Moogシンセサイザーの音色が印象的な"After the Dance"はメロウなインスト。リオン・ウェアがマイケル・ジャクソンに提供した楽曲"I Wanna Be Where You Are"も小品ながら美しいメロディ/アレンジにときめかされる。
- 1971年のアルバム『What’s Going On』のタイトルトラックをマービン・ゲイから手渡された時、モータウンの操業者ベリー・ゴーディ氏は、今までこんな最悪な曲は聴いたことがないと言ったそうだ。あまりにも間延びした曲調で、歌詞は政治的メッセージがあまりにも強かった。だがエルヴィスさえ1969年にはプロテストソング「In the Ghetto」を歌っていたのだから、マービン・ゲイが歌ってよくない理由はなかった。 本作の真髄はその軽やかさにある。さっそうと流れていく楽曲群に、自然体で、即興かと思わせるようなパフォーマンス。実際に、タイトルトラック「ホワッツ・ゴーイン・オン」のサックスパートを手掛けたEli Fontaineは、肩慣らしのつもりで収録したという。また、同じ1971年にスライ&ザ・ファミリー・ストーンはアルバム『There’s A Riot Goin’ On』をリリースし、そこでは怒りの矛先が辛辣(しんらつ)なファンクとなって表れていたが、ゲイはみずみずしく流麗なストリングスとラテンパーカッションにのせて怒りを昇華させた。つまりそこには穏やかさだけでなく、洗練さも伺える。薬物に依存する人の姿を描いた「フライン・ハイ」や「無への叫び」のような殺伐としたテーマですら、穏やかな川の流れのようだ。プロテストソングだからといって、必ずしも挑戦的である必要はない。思わず耳をそばだてたくなる、和やかなプロテストソングもあり得ることを証明した作品だ。
- 1997年
アーティストプレイリスト
- 艶のある歌声と創造性で新たなソウルミュージックを切り拓いていったシンガー。
- モータウンのプリンスが贈る、情熱と心の痛み。
- マービン・ゲイの崇高なグルーヴが多くのアーティストからサンプリングされているのは、尊敬と憧れの表れ。
- 作詞、作曲やメッセージ性、セルフプロデュースなど、アーティストの新たな在り方を示した。
- 魅力的な歌声の裏にある音楽的な深みや、円熟期に見せた高い作家性を味わう。
ライブアルバム
マービン・ゲイについて
マービン・ゲイがいなければ、R&Bのみならずアメリカンポップも今とは違うサウンドになっていただろう。ミュージシャン、ソングライター、そしてシンガーとしての彼の才能は、モータウンサウンドを広く世界に知らしめた。そして多岐にわたる彼の革新的なビジョンは、R&Bの境界線を押し広げたのである。1939年にワシントンDCで生まれたゲイは、タフな子ども時代を送った後、1957年にMarqueesというボーカルグループを結成した。グループは元ハーヴェイ&ザ・ムーングロウズのシンガー、ハーヴェイ・フークワのバックバンドになり、ゲイは1961年にデトロイトに移住。モータウンのセッションドラマーとして、マーヴェレッツの「Please Mr. Postman」やスティーヴィー・ワンダーの「Fingertips」などの画期的な楽曲に参加した。その後モータウン所属のアーティストのために曲を作るようになり、マーヴェレッツの「Beechwood 4-5789」や、マーサ・リーヴス&ザ・ヴァンデラスの「Dancing in the Street」といったヒット曲を共作した。自身の名義でモータウンからアルバムをリリースし始めてからはジャズバラードを歌っていたが、流れるようなテノールをR&Bに転向させた1962年の「Stubborn Kind of Fellow」で初めての成功を掴む。移り気な彼はその後数年の間にミュージカルの楽曲をレコーディングしたり、よりソウルフルな側面を出す中でナット・キング・コールのトリビュートアルバムを手掛けたりした。そして「How Sweet It Is (To Be Loved by You)」や「Ain’t That Peculiar」などのクロスオーバーヒットに加え、「Ain’t Nothing Like the Real Thing」に代表されるタミー・テレルとのデュエット曲の数々で本領を発揮したのだった。そして1968年の不滅の名曲「I Heard It Through the Grapevine」からはエモーショナルかつ音楽的に洗練された方向へと進み始め、1971年には社会的意識が高く複雑なテクスチャーから成るアルバム『What’s Going On』でソウルの流れを一変させた。その後もゲイが革新を止めることはなく、1977年に大ヒットしたディスコ曲「Got to Give It Up」は大人になってからのマイケル・ジャクソンのキャリアに重要な影響を与え、シンセとドラムマシーンが魅力的な1982年のエレクトロソウル「Sexual Healing」は再びR&Bを新たな領域へと導いた。しかし1984年4月1日、自宅でのけんかのさなかに父親に撃たれて命を落としたことで、彼のキャリアは突然悲劇的な結末を迎えたのだった。
- 出身地
- United States of America
- 生年月日
- 1939年4月2日
- ジャンル
- R&B/ソウル