マーク・ロンソン

マーク・ロンソンは複数の肩書とビジネスの手腕を併せ持つ。プロデューサー／ソングライター／エンターテイナーである彼は、2000年代に入ってから、私たちが知っているポップミュージックのサウンドとそのスタイルを何度も更新してきた。1975年にロンドンで生まれたロンソンは、音楽に囲まれて育った。父親は複数のバンドのマネージャーを務めた人物で、母親は後にフォリナーのミック・ジョーンズと結婚している。そんな環境の下、ロンソンのキャリアはニューヨーク大学に在籍中、ヒップホップのDJとしてスタートした。そして、2003年のデビューアルバム『Here Comes the Fuzz』で、音楽界の橋渡しをする優れた能力を初めて披露する。そこでは、ファンクやディスコ、レゲエのサウンドに、意外ともいえるゲスト陣を組み合わせた。ゴーストフェイス・キラ、ジャック・ホワイト、ショーン・ポール、リヴァース・クオモといったアーティストを迎え、ジャンルを超えた新世紀のポップへのアプローチを先取りすることとなった。2007年リリースの『Version』では、色あせない洗練された音楽スタイルとソウルフルなサウンドは深みを増し、それと同時に、彼のプロダクションワークも同じくらい称賛された。また、リリー・アレンやクリスティーナ・アギレラの作品と並んで、エイミー・ワインハウスの2006年の名作『Back to Black』を共同プロデュースし、グラミー賞で3部門を受賞した。その後は、アデル、ソランジュ、Wiley、レディー・ガガ、ポール・マッカートニーらの作品をプロデュースしているが、この多彩な顔ぶれには唯一の共通点がある。それは境界線を破って歴史を刻みたいという彼らの決意である。そして歴史を刻むという意味においては、ロンソンも無縁ではない。2014年リリースのワクワクするようなパーティージャム「Uptown Funk (feat. Bruno Mars)」は、チャートを席巻したことだけでなく、この先何十年にもわたって結婚披露宴を盛り上げるであろう、時代を超越した完璧なポップソングとして広く認識されていることでも注目に値する。しかし、その成功に彼は縛られることはない。2015年の『Uptown Special』や2019年の『Late Night Feelings』のように、その後のアルバムではより独創的なゲストを迎えつつ、定番のスタイルをまったく新しいものにするための新たな方法を見いだしている。