その魅惑的な歌声と並外れた創造への情熱を兼ね備えたケイト・ブッシュは、芸術的実験とポップな満足感の間で不可思議なバランスを保っている。彼女は1970年代後半にキャリアをスタートし、難解な連作歌曲や概念的な作品と並行して、「This Woman’s Work」「Babooshka」「Running Up That Hill (A Deal with God)」といったヒット曲を作り出してきた。文学的なテーマや音楽的なイディオム、そしてスタジオの革新性を見事に抽出したそれらの作品群は、St. Vincentやビッグ・ボーイといった幅広いアーティストたちにインスピレーションを与えている。1958年7月にイングランドのケントで生まれた彼女（本名Catherine Bush）は、常に応援してくれたローマカトリックの家族に見守られ、村の農家で育った。そこでは2人の兄、ジョンとパディが彼女の最初のコラボレーターだった。大きな転機は16歳の頃、ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアの協力を得てデモテープを制作し、レコード契約を獲得した。エミリー・ブロンテの小説『嵐が丘』にインスパイアされた1978年のシングル「Wuthering Heights」でデビューしたブッシュは、その甲高いソプラノとミュージックビデオにおける独自の解釈によるダンスの動きで生々しい欲望を呼び起こし、当初からセンセーショナルな存在だった。そして1980年代から1990年代にかけては、シンセポップやピアノバラード、アイリッシュフォークや素朴なリリシズムの間を行き来する1985年の名盤『Hounds of Love』を含む一連のアルバムを生み出し高く評価された。近年は以前より控えめに活動しており、2000年代と2010年代には3作のアルバムリリースのみにとどまった。だが、ブッシュの先見性のある作品群は、ロードやビリー・アイリッシュのようなアーティストたちが既存のジャンルを超えたポップへの道を切り開く上で役立ち、また、彼女の芸術的自律性は、音楽業界における重要な基準を示している。