1979年にBlack Sabbathを解雇された後、オジー・オズボーンは誰からも大して期待されない存在だった。ロサンゼルスのホテルに引きこもり、酒浸りで自堕落な生活を送る彼は、世間から見放されていた。そこに現れたのが、Sabbathに名声と富をもたらした悪徳マネージャー、ドン・アーデンの娘であるシャロン・アーデンだ。“オジーは終わった”と確信したドン・アーデンは娘に契約を譲渡し、そして、未来のシャロン・オズボーンとなる彼女は早速オジーを立ち直らせようと手を差し伸べた。
オジー復活の鍵となったのは、クワイエット・ライオットのギタリストで、1970年代後半と1980年代初頭にシュレッドギター革命を起こしたエドワード・ヴァン・ヘイレンの唯一のライバルとも言われたRandy Rhoadsだ。若さとクラシック音楽の素養、そして恐ろしいまでの才能を持ち合わせたRhoadsは、まさにオジーが消えかけたキャリアを再燃させるために必要な起爆剤だった。さらにオーストラリア出身のベーシストで作詞家のBob Daisleyと、ドラマーのリー・カースレイク(ベテランの2人は共にユーライア・ヒープのメンバーとして活躍)が参加し、1980年にRhoadsとオジーはヘヴィメタル史上最も重要なアルバムに数えられる名作『Blizzard of Ozz』をレコーディングするに至った。
アルバムのリリースから数十年経っても、けたたましいリードシングル「Crazy Train」はいまだにオジーのソロ代表曲として君臨し続ける。とどまるところを知らないRhoadsのリフに加え、冷戦時代の軍拡競争をオジーの予測不能な人格のメタファーと重ね合わせてみせた歌詞も力となり、この曲はオジーの大胆な新時代の幕開けを高らかに宣言した。次のシングルになった「Mr. Crowley」は、悪名高いイギリスのオカルティスト、アレイスター・クロウリーの名を間違った発音で歌ったことが今や伝説となっているが、それもまたオジーの復活劇を象徴する一幕となった。レインボーのキーボーディスト、Don Aireyによるイントロはハマーフィルムのホラー映画から飛び出してきたかのようで、重く不気味なテンポはBlack Sabbath時代のオジーの作品を彷彿(ほうふつ)とさせるものの、この曲を別次元へと引き上げているのは紛れもなくRhoadsが放つ鮮烈なネオクラシカルのギターソロだ。
アルバムの注目曲は他にもある。「I Don’t Know」は1970年代頃のSabbathとは一線を画す曲だ。攻撃性とメランコリーを交錯させながら、目もくらむようなRhoadsのギターで彩られ、音楽的意図の宣言であると同時に神の存在は人間に知り得ないとする不可知論の表明でもあった。一方、「Revelation (Mother Earth)」は環境保護をテーマにしているが、その問題がブームになるよりずっと前に書かれた曲であり、後半にはRhoadsとAireyを中心にした怒涛(どとう)のサウンドの嵐が炸裂する。そして道徳的なアンチポルノのアンセム「No Bone Movies」は、自慰行為も思いとどまらせるという一風変わったキャッチーなブギーロックだ。
「Goodbye to Romance」は、このアルバムのために最初に書かれたと言われている。オジーがSabbath時代の栄光に別れを告げる曲で、ボーカルのメロディは彼が敬愛するビートルズを彷彿とさせ、Rhoadsがバロック風の繊細なフレーズを奏でる。続く「Dee」は、Rhoadsの母親に捧げられ、彼女の名を冠したクラシックなアコースティックのインストゥルメンタル曲だ。そしてエネルギッシュなリフが鳴り響く「Suicide Solution」は、リリースから5年後に物議を醸すことになる。自殺願望のあった若者の両親が、この曲を聴いた直後に息子が自ら命を絶ったと主張し、オジーとレコード会社を訴えたのだ。(歌詞の大半を書いたDaisleyは、実際には酒浸りで死にかけていたオジーの様子を描写したものだと語っている。)
『Blizzard of Ozz』が再び論争の的になったのは2002年、シャロン・オズボーンがリイシューのために当時のベーシストだったRobert Trujillo(後にメタリカに加入)とドラマーのMike Bordin(Faith No More)を起用して、Daisleyとカースレイクのパートを再録音させた時のことだ。しかし世間からの大きな反発を受け、2011年のリマスター版ではオリジナルのベースとドラムのトラックが復元された。そのリマスター版と、後にリリースされたエディションには、いずれも「Crazy Train」のB面曲でありアルバム未収録だった「You Looking at Me, Looking at You」も追加収録されている。