Scriptonite(Скриптонит)が2015年に発表したデビューアルバム『House with Normal Events (Дом с нормальными явлениями)』は、ロシア語ヒップホップの新時代を象徴する作品となり、カザフスタン発のラップミュージックが大きく注目されるきっかけを作った。驚くほどソリッドかつ本格的な内容のこの作品は、深みのあるヒプノティックなサウンドに乗せ、困難な状況においても成長し生き抜いていくことを力強く描き出した。 1990年にカザフスタンのパブロダール近郊の街、レニンスキーで生まれたScriptonite（本名Adil Zhalelov）は、幼いころからヒップホップに夢中だった。ブレイクを果たしたのは2014年で、モスクワで影響力のあるレーベルGazgolder Recordsと契約しリリースしたファーストアルバムがヒットを記録した。この成功を元に、2017年には『Ouroboros (Уроборос)』を含む複数のアルバムを制作し、自らのイメージを磨き上げ、独自のフロウを完成させた。彼はキャリアの次なるステップとして、8人のミュージシャンと共にGruppa Skryptoniteという名のバンドを結成し、さらにはレーベル兼プロダクションチームのMusica 36もスタートさせた。その後、2019年には、アナログシンセとドラムマシンで録音した実験的なアルバム『2004』をリリース。2021年のアルバム『Whistles and Papers (Свистки и бумажки)』からも明らかなように、Scriptoniteは継続的に多彩なジャンルを取り入れ、ヒップホップの境界線を広げ続けている。