You Signed Up For This (Apple Music Edition)

You Signed Up For This (Apple Music Edition)

「私は自分のアルバムの一番のファンで、長い間ずっとそうだった」と、英ブライトン生まれのシンガーソングライター、Maisie Petersはデビューアルバム『You Signed Up For This』についてApple Musicに語る。「しばらく曲作りを続けてきたから、これ以外にも進めた方向性がたくさんあるし、違うタイプのアルバムだっていくらでもできたけど、これが正解だと確信してる」。本作で彼女は、必ずしもアルバムを引率するリーダーになる必要はなかった。作品全体に影響が見られるテイラー・スウィフトがすでに味方についていたし、エド・シーランがPetersを自身のレーベルGingerbread Man recordsに迎え、今作に収録された3曲の制作に参加しているからだ。「彼との曲作りは本当にうまくいった」と、Petersは言う。「音楽を作るのってすごく孤独(な作業)に感じることもあるから、チームメイトがいて、応援してくれる人がいるのはすごくうれしいこと」『You Signed Up For This』には、これまでの未発表曲や、2020年夏にサフォークにあるAirbnbで書かれた新曲をはじめ、彼女の名を広めて熱心なファンができるきっかけとなったソフトなインディーフォークだけでなく、「John Hughes Movie」のような1980年代風のサウンドや「Boy」のような2000年代初期を思わせるサウンド、さらには「Psycho」の弾むような堂々たるポップも取り入れられている。「私の音楽性のすべてを映し出すアルバムにすることが大切だった」と、Petersは付け加える。「すごく自由で、やりたいことが何でもできた」。そのすべてを貫いているのは、もちろん、かみそりのように鋭いリリシズムと言葉遊びだ。シーランをして、2021年のApple Musicとのインタビューで、彼女のことを“今の世代の代弁者”と言わしめるほど、その年の最も期待される新鋭ソングライターの一人となったPeters。彼女は、若者の日常と恋愛事情を「反抗的で、ドラマチックで、子供じみた」態度で、そこから内省も伴いながら巧みに分析するように曲を描き出す。ここでは、そんな輝かしいデビュー作を本人が一曲ずつ解説する。You Signed Up For This私について知っておくべきことを箇条書きにしたような感じ。ナレーターは私。これが今の私の日常であり、歌い方であり、曲の作り方。でもちゃんと自覚があって、自分にあきれるところから始まってる。この曲にはシンセサイザーのノイズがあって、アルバムのそういう面へのオマージュのようになっている。同時にギター感もあって、それからその2つが合わさったコールドプレイ風のところもある。一つのサウンドから出て、また別のサウンドへ突入していくように。I’m Trying (Not Friends)この曲には5,000個くらい歌詞がある。私の性格のすべてと、当時の私が経験してたことが全部歌われてる。最初のバースとコーラスは、本当は『Trying』(Apple TV+で配信されたコメディで、Petersは「Session 2」のサウンドトラックを手掛けた)のために書いたんだけど、雰囲気が合わなかったから、そこでは使わなかった。混乱してて、不機嫌で、パッシブアグレッシブ(受動的攻撃性)で、本当に欠点だらけの曲。John Hughes Movieこの曲を書いた時は17歳で、当時はしっくりこなくてリリースできずにいた。アルバムのためにやり直してみて、これまでも私の曲をいくつも手掛けてくれたAfterhrs(ロサンゼルス在住のプロデューサー集団)に送ったら、ピカピカに磨いてくれた。これはすごくナイーブで、楽観的で、馬鹿げてて、恥ずかしくて、いかにも10代らしい曲。このアルバムの前半はメロドラマで顔を殴ってくるような感じがする。Outdoor Pool携帯電話のボイスメモに、「真夜中、屋外のプール (Midnight, outdoor pool)」って残してあった。この曲のコーラスが出来たのは、サフォークで「Love Him I Don’t」を作った日の夜だった。とりとめのない感じのコーラスで、意味を理解するのがすごく大変だった。どうして屋外のプールにいるんだろう? って。その夜に(テイラー・スウィフトの)『folklore』がリリースされて、「betty」を聴いてたら、急に分かった。「もう、いつもずっと私でいることなんて無理」だって。それから数日後にもう一度取り組んでみて、15歳の視点で語るべきだということに気付いた。そこからはもう、一気にできた。超イギリスっぽくしたくて、『スキンズ』(英国の人気ティーンドラマ)とかHMVとか、フランスへの交換留学とか、イギリスらしいフレーズをできるだけたくさん入れてみた。Love Him I Don’tアルバムの中でお気に入りの曲。歌詞的にも音楽的にも、これまでやってきた曲作りや恋愛に関して学んできたことがたくさん取り入れられてる気がする。ほんとヘビーだけど、軽さもある。気付いたら口ずさんでるような曲。Psychoこの曲は何もかもがワイルド。アルバムの最後のセッションで出来上がった。「アルバムは完成したから、何か他にできたら最高だけど、できなかったらこれで終わり」って感じだった。エド・シーランとスティーヴ・マック(多作なイギリス人ソングライター)と一緒にいて、「すごいことをやってきた人たちと一緒にいるんだから、私は勝てる、ここでビッグな曲を書くんだ」って思ってた。前にエドが、「Psycho」って言葉はすごくいい曲のタイトルになるって言ったことがあった。この曲はセッションを始めたら45分くらいで出来たんだけど、後になってすごく怖くなってしまった。というのも、今までの私とはまったく違う曲だから。実際マネージャーに、“死んでも”リリースしないって言ったんだけど、吹っ切れて本当によかった。今はこの曲が大好き、だってすごく楽しい曲だから。Boy(プロデューサーでソングライターの)Joe Rubelとエド・シーランと私で「Hollow」を作った後、一緒に食事をした。ちょっとして、私が「もう1曲書こうよ」って言ったりして。みんなワインを飲んでたから、ふざけた感じの雰囲気で、そのうち“ファックボーイ”と“ソフトボーイ”の話になって、私が男性陣にその違いを教えてあげたんだけど、そしたら「Fuckboy」ってタイトルの曲を作ろうってことになって。曲作りしながら涙が出るほど笑ってたから、それが聞こえるんじゃないかな。本当に最後の段階で、“fuck”を取って空白のままにしようって私が提案したら、最終的にみんながそのアイデアに同意してくれた。Hollowこれは特別な曲。エドとジョーと、Johnny McDaid(スノウ・パトロール)と一緒に作った。エドとジョニーに初めて会った日に、みんながこの曲には不思議な力があると分かってた。すごくシンプルだけど、ちょっと変わった魅力もあって、私が音楽を始めたころの曲だけじゃなく、エドの初期の作品も思い出させるところがある。すごく悲しくて、「逃げたのはあなたの方で、たくさん悪いことして逃げ切った (You're the one that got away and you got away with a lot)」っていう歌詞が、アルバム全体の中でも特に気に入ってる。Villainこの時点まで、このアルバムにはすごく無茶な言い分が多い。もともとは、傷付けられて、「私が正しくてあなたは間違ってた」っていう思いから曲が生まれてる。でも「Villain」では、現実を突き付けられて目が覚めて、自分が物語のヒーローじゃないときもあるんだって思い知る瞬間を描いてる。ほとんど立場が平等になって、手を挙げて前に進んでいくように。サウンド的には、3曲めの「John Hughes Movie」のお姉さんみたいに感じた。この曲ではブルース・スプリングスティーンやザ・キラーズのブランドン・フラワーズを目指したところがある。Brooklynこれは私と双子のエレンが19歳のころにニューヨークへ行った時のことを歌った曲。ガトウィック空港に行って、ひどい時間のフライトで、出発は午前2時で、ヌードルが朝ごはんだった。この曲ではその旅行のことをそっくりそのまま歌ってみた。(ソングライターでプロデューサーの)フランシス(別名Sophie Cooke)との共作で、ごく自然に出来上がった。面白かったのは、この曲をプロデュースしたいって人がたくさんいたんだけど、結局フランシスが完成させたから、デモとあんまり変わってないこと。女性2人で曲を書いてプロデュースもしたっていうのは、本当に素晴らしいと思う。Elvis Song今作の中で特に古い曲の一つ。私にとってはスタジアムの高揚感がある曲だけど、よりリアリズムがあるとも思う。「私にはあなたを恋しく思う資格がない」っていうのは、ずっと頭の中にあったフレーズで、これは確かに以前自分で感じたことがある気持ちを歌ってる。Talking To Strangersこれはラブソングで、本当にスイートな曲。(ソングライターの)ブラッド・エリスとジェズ・アシャーストとの共作で、真夜中に出来た曲だった。ここで聴けるボーカルは、その時に歌ったものを使ってある。実は、この曲全体が基本的にデモのままで、ロックダウン中に自宅の寝室のスタジオでハーモニーを付け加えた以外は変えていない。ほとんどそのまま使えるようなデモだったから。Volcanoこれは別の領域に踏み込んだ曲で、あまりにたくさん意味が込められてるから説明するのが一番大変なくらい。自分の行動の結果を分かってないような人たちというのが、この曲の本当のテーマ。自分を傷付けた人が何の罰も受けないで逃げ切ってしまう。その人は誰からも非難されなくて、日常生活を続けていけてるのに、こっちはこの曲から抜け出せないままでいる。そんなことが繰り返し続いてると私は感じてる。この曲においては、間違いなく#MeToo運動が力になった。リアルで激しい女性の怒りがたくさん込められていて、自分で自分を黙らせることにも触れている。参考にしたのは、ドリー・パートンやケイシー・マスグレイヴス。カントリーのミュージシャンほど“女の怒り”をうまく表現できる人はいないから、こういうテーマのトーンにふさわしいと思った。Tough Act私に言わせれば、この曲は悲しげだけど、確かな成長も感じられる。希望と敬意に満ちていて、「これは誰のせいでもない」って言えるまでに成長したところから生まれてるから。曲が終わるころには、これは悲しい曲なのか、幸せを歌った曲なのか分からなくなると思う。最近聴き直してみて、2つ目のバースの「私は忙しくなって、あなたは子供のころと違う人間になった私を恋しく思えなくなった (I got busy and you forgot how to miss me when I'm not much of who you grew up with)」っていう歌詞にはっとさせられた。そこに共感できる人は多いだろうし、恋愛でもプラトニックな関係でも家族でも何でも、あらゆる人間関係に当てはまることだと思う。今の自分はかつての自分とは違っている、それでいいと分かるんだけど、それって誰もがある時点で受け入れなきゃいけないことだから。もともとはハーモニーのないピアノバラードで、かなり削ぎ落されたサウンドだった。それが結果的にこんなに美しいオーケストラのアレンジに行き着いた。歌詞もアルバムの幕を閉じるのにふさわしいものになったと思う。

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