VINNY

VINNY

「BAD HOPの時よりもメロディアスにしたり、ラップもあえてうまくやろうとしたり『これってやってなかった』と思ったことをやってみました」。BAD HOPのメンバーとして、高音ボイスのラップで唯一無二の存在感を放ってきたVingoは、初のソロアルバム『VINNY』についてApple Musicに語る。「VINNY少年が大人になってVingoに変わっていくというコンセプトを頭の中に持ってアルバム全体を作っています。前半はものすごく怒っていたり、ちょっと悪かったり、荒れてるようなイメージで、後半になるにつれて音も落ち着いて、大人になっていくような展開になっています」 レイジビートでアグレッシブに攻める「楽笑」、ロックに振り切った「Growing Pains (feat. swetty)」、10代の夢と喪失を回想する「IKANAIDE」など全18曲。Vingoがこれまで歩んできた人生、その精神的な変遷と音楽的な成長を余すところなく注ぎ込んでいる。「いろんなジャンルの音楽をここ2年間ぐらい聴いている。ヒップホップ以外からもインスピレーションを受けて作っています。こだわったポイントはありのままでいること。自分の世界観を崩さない楽曲を作ることをすごく意識しました」。アメリカのヒップホップシーンで活躍するBig Papito、F1LTHY、London Cyrをはじめとするプロデューサーたちと、¥ellow Bucks、JP THE WAVY、LEX、LANAら豪華客演陣を迎えた本作について、ここからはVingo本人に全曲を紹介してもらおう。 INTRO この曲を作ったのは2年前くらい。そこからトラックをいろんな方向に変えてみて、多分3パターンぐらい作って、このタイミングでこれに決めた感じです。トラックメイカーのアントニー(Foux)もかなりこだわって作ったって言っていました。物語の始まりのような僕のイメージがみんなにも伝わればいいな。 Villains (feat. MaRI & Eric.B.Jr) 僕、マリリン・マンソンがめちゃめちゃ好きで、マリリン・マンソンみたいな曲を作りたいなと思って作りました。趣味です(笑)。ビートのスネアの打ち方は、カニエ・ウェストの「Black Skinhead」やジェイデン スミスの「Watch Me」とか、行進してるような雰囲気が欲しくて取り入れました。自分の中で初めて映画っぽさみたいな、コンセプチュアルなものが作れるんじゃないかと気付いた曲でもあるかもしれない。僕にとっては新しいものに触れた感じです。 楽笑 僕の友達が、楽に勝つんじゃなくて、俺たちは楽しく笑うんだっていうので「楽笑」っていう漢字を書いてて「何それ、めっちゃ良いじゃん」「俺らっぽいね」という話になって、そのままタイトルにしました。プレイボイ・カルティやDestroy Lonely、Ken CarsonとかOpiumの周りのトラックを手掛けてるF1LTHYがたまたま日本に来てて、一緒にやりました。 NewYankee (feat. NOV) 僕とすごく仲のいいアトランタのプロデューサー、Big Papitoのトラック。結構ハード。BAD HOPのラストアルバムの時から作っていたけど、アルバムには結局入らなかった。でもなんか気に入っていた曲。NOVは、僕の仲のいいラッパーで後輩みたいな存在。「これやってみ」って言ったら2秒くらいで返ってきた。仕事早!みたいな、そんな感じでした。 EnterPayment アルバムの中で一番気に入っているんじゃないかなってぐらい気に入っています。エンターテインメントとペイメントを掛けていて「俺の金の使い方はエンターテインメント」みたいなことを歌っています。マイアミに行った時、クラブでストリッパーたちに金をぶん投げまくってたんですけど、その時、これってエンターテインメントだなと思ってこの曲になりました。ふざけてるけど、嘘はついてないかなっていう感じです(笑)。 EUPHORIA オランダでテクノのフェスティバルに行った時に聴いた音がカッコ良すぎて、このメロディ使ってやりたいみたいな感じで作った曲です。 One Mor3 T!me (feat. LANA) 僕、めちゃくちゃ酒飲みで、テキーラとか「もう1回!もう1回!」って何回もショット飲むんですけど、本当にそれだけの曲です(笑)。 Unicorn 大谷翔平選手がユニコーンと呼ばれていることを知り、タイトルにしました。世界を見据えているぜ、みたいな曲を作りたかった。全体的にはフレックスになっていて「お、歌えるかも」「こういうことできるんだ」みたいな、新しい自分を見つけた曲です。 V この曲は、ハチャメチャに気分が良くて調子乗ってる俺。以上。 TOP 3 自分の人生の中で大切なもの、僕が大事にしているものだったり、ことだったり、人だったりを歌っています。どんなトロフィーよりもその時に誰と一緒にいるか、誰が横にいてくれているのか。僕は、人生は人と人のつながりだと思っている。そういう気持ちをただただ詰めた一曲です。 NUMBER ONE (feat. LEX & Hezron) 一番にならなきゃいけないとか、順位とか、すごく数字にとらわれていた時期があった。あいつより俺は劣っているとか、劣等感を抱えていました。でも、大事なのは順位ではないなって思うことが増えてきて、だんだんとそれに対するプレッシャーみたいなものがなくなってきた。「こんな俺でもここまで来れるぜ」みたいな、ナンバーワンになれないと思ったVINNYが目指すスーパースターを書いています。みんなに勇気を持ってほしいし、一歩踏み出すことを悩んでいる人は飛び出してみてほしいという思いも込めました。LEXとHezronっていう、若くてイケイケなラッパー2人が参加していて、彼らにとってのナンバーワンとは何なのかも書かれているので、よく聴いてみてください。 Growing Pains (feat. swetty) メジャーのトラックを作ってる人と初めてセッションした曲。その場でギタリストが何フレーズでも弾いてくれて、それに合わせてその場でフロウする新しい作り方にチャレンジしました。楽曲的にもかなりロック色が強い。アルバムの中で一番異色な雰囲気を放っていると思う。大阪の超若手、swetty君を入れた楽曲です。アーティストが成長していく中で感じる苦しみとか劣等感、痛みみたいなのを成長痛に比喩して歌っています。人生の中で、音楽が大嫌いになった瞬間があって、聴くのも嫌だし、歌うのも嫌だし、すべてがストレスだった時があった。その時に、暗い部屋で一人でうじうじしてた感情を詰め込みました。「大丈夫だよ」みたいな軽い言葉を言われても、しょってる重さが違うんだよって、ものすごく一人で殻に閉じこもっていた。そんな、弱いけど強がっていた自分のことを歌っています。 Lost in you (feat. Kohjiya) トラヴィス・スコットの周りのプロデューサー、London Cyrが手掛けた曲。彼と初めてセッションしたのが3年前ぐらいで、その時ちょうど「Growing Pains」のような、もう音楽が大嫌いでしょうがない時だった。そんな気持ちを無くしてくれたのがこのLondon Cyr。一緒にスタジオに入って1曲目作った時に「考えすぎんじゃねえよ」「おまえカッコいいから自由にやれ」みたいなことを言ってくれた。そういえば音楽って楽しむことの方が大事だったわと思って、そこで自分が今音楽に対して間違った感覚を持っているっていうことに気が付いた。その時に6曲ぐらい一緒に作った中の一曲がこれです。内容としてはもうエロス。ただただエロいこと言ってみようと思って作りました。 Made in Japan (feat. ¥ellow Bucks & JP THE WAVY) タイで開催されたRolling Loudに行った時に、僕ら日本人のラッパーたちの扱いに憤りを感じた。英語が拙かったり、楽曲の意味が伝わりづらいというハンディキャップを背負ってる中で、WAVY君(JP THE WAVY)とかバックス(¥ellow Bucks)がライブしてる時に、曲は普通に俺らの方がカッコいいじゃんと思った。敵対的な意見を言いたいわけじゃないけど、日本人のすごさを分からせるぞという思いで作った曲です。音もアジアンライクなイメージがありました。 001 (feat. Candee) 一度女性に「ビビってるの?」と言われたことがあって「違うぞ、これは俺の礼儀だ」って、それを歌詞にしました(笑)。何の曲か、みんな当ててください。 IKANAIDE 10代の頃、僕が音楽を始めたてで、これで飯食うんだみたいな時に一緒にいてくれた女性とお別れをした後の気持ちの話をしています。本当だったら一緒にいた日曜日が何も予定がなくて不安になったりとか、僕が無理やり離れたので、遠くから彼女の行かないでっていう声が聞こえているような、エモい感じで作ってます(笑)。やっぱり金はなかったので夜中にカップラーメン2人で食ってたんですけど、一人で食うとうまくねーなとか、あまり良くないお金でデートに連れて行ったりとか、成り上がるぞっていう気持ちとこのまま君と一緒にいたら僕はダメになってしまうかもしれないという、ぐちゃぐちゃな感情。ものすごく若かったんでピュアな気持ちとか、お互いに好きだった曲聴けなくなっちゃうぜとか、よく行ってた店に行けなくなっちゃったとか、意外と僕はそういうふうに思っちゃうタイプで、そのまま思いをつづった感じです。 Tokaido Line 18歳の時、自分がやっていたTokyo Young Visionというグループを一人脱退して、YZERRに声をかけられてBAD HOPというクルーに入るために、お金の無い中、川崎という街へ東海道線に乗って向かった。そこから少し大人になって、自分たちの名前は売れてきたけどお金が全然なくて、夢はお金じゃ買えないんだって東京の友達に誤魔化しながら、やっぱり奢らないといけない時は奢らないといけなくて、奢って節約するために実家の母ちゃんの飯を食って、食いつないでいた時の話です。川崎という街はすごく居心地が良くて、僕にとっては第二の地元であって、もはや第一の地元みたいな存在。見慣れない街が見慣れた街になってきて、気が付くと東京の方が居心地が悪くなったりもした。東京からやってきた僕は本当の意味の川崎の人にはなれなくて、苦しい時があったんですけど、そういう自分の中のエモーショナルな部分を詰め込みました。 It could be us 一番最後にできた曲で一番最後の曲になった。やったことないなと思って、フック、サビを全部英語でやってみました。英語で歌うという新たな挑戦をした曲でもあり、自分の音楽観の中でも、かなり洗練された楽曲にしたくて、なるべく無駄のないフロウの展開と聴いていて飽きないような感じに仕上げた。リリックもこだわりの部分があります。高嶺の花の女性を落とそうと頑張った、そして遊ばれてしまった。ただやっぱすべて自然のタイミングで、今、俺は君が言っていたものは全部持ってる。やってやったぜ、みたいなのも書いてます。