Vie

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「奇妙な人こそ生き残ると思う(I believe the weirdest ones survive)」とDoja Catは「Stranger」で歌う。それは、恋に落ちたアウトサイダーのための魅力的でパワフルなバラードにも、彼女自身の予測不能な軌跡にも当てはまる言葉だ。2021年の世界的ヒット作となったサードアルバム『Planet Her』で、Doja Catはネット発の風変わりな存在から、本格的なポップラップスターへと進化を遂げた。もっとも、完全にそうだったわけではない。常に逆張りの姿勢を崩さない彼女(本名:Amala Dlamini)は、2023年初頭に「ポップミュージックから離れる」と宣言。その数か月後に発表した4作目『Scarlet』では、メインストリームでの成功の枠組みを拒むような鋭いラップ曲を通じて圧倒的なスキルを見せつけた。しかし昨年、5作目のアルバムを構想し始めた時、その振り子は逆方向に振れたのだ。「私は愛について語ることが大好きなんだと思う」とDojaはApple MusicのZane Loweに語る。「そして音楽は、愛をさまざまな形で表現するための扉でもあると思う」 フランス語で“人生”を意味し、同時にローマ数字の5の音にも通じるタイトルのアルバム『Vie』で、Dojaはデロリアンに乗ってまったく新しいサウンドとスタイルを引っさげて登場する。1980年代のデカダンスを巧みに取り入れながら、強烈な恋愛や依存性の強い愛情について歌い、軽快なドラムマシン、力強いベースライン、時折差し込まれるサックスソロで華麗に彩る。「AAAHH MEN!」ではクイーンを思わせるようなエネルギーで、男たちのいら立たしくも抗(あらが)いがたい快楽を歌い上げ、リードシングル「Jealous Type」ではニュージャック・スウィングを2020年代によみがえらせる。当然ながら「1980年代的なけばけばしいロマンス感覚」と彼女が呼ぶものは、ポップ界きってのノスタルジストであるジャック・アントノフとの初コラボレーションを必然的に導いた。「個人的なことを語りながら新しいものを創り上げ、新しい誰かと知り合う。そのすべてが、とても自然に一つになったの」と彼女はLoweに語る。 前作よりも遊び心に満ちた『Vie』は、派手でゴシップ的な題材を楽しむアルバムだ。「Silly! Fun!」では、酔ったようなR&Bリバイバルの雰囲気で妄想の恋愛を歌い、ハネムーンが始まった途端に終わりを迎える(「赤ちゃんを作るのも楽しいかもしれない/ラスベガスで結婚なんて私たちほんとにふざけすぎ “I know it could be a blast to just pop out a baby/We’re so very silly, getting married in Vegas”)。しかし、けばけばしいからといって浅いわけではない。「このアルバムは実際、私がセラピーに通い、週2回は必ず行くほど熱心になったセッションから生まれた」と彼女は語る。「人間の経験や、脳が意識的、無意識的にどう働くのかを学ぶことから始まった」。一方で彼女はボーカル力も磨き上げ、特に「Jealous Type」の後半ではその歌唱力が際立つ。「これまでできなかったことが、今ではずっと多くできるようになったと感じる」と彼女は言う。「デビュー以来やってきたことの、より進化し成熟したバージョンがこのアルバムというわけ」 艶めいたロマンスにとどまらず、愛は他の形でも現れる。「創造性そのものが愛だと思う」とDojaはLoweに語る。「愛のためには多くをリスクにさらすもの。だからミュージシャンが自分のやっていることを愛しているなら、時には居心地が悪かったり怖かったりすることもある。でもそんなの関係ない。だって、その対象を心から愛しているからこそなんだから」

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