

マドンナの究極の一作ともいえる1998年にリリースのアルバム『Ray of Light』は、特別長い時間をかけてレコーディングされた。その間に彼女は自身のカトリックの堅信名から取った別人格“Veronica Electronica”を思い付き、あまりに強い思い入れからアルバムのタイトルにしようと考えたほどだったが、最終的には『Ray of Light』に落ち着いた。彼女にとって7作目となる魅惑的なそのアルバムは、アメリカのメインストリームにエレクトロニカを紹介し、ポップミュージックが10代向けの明るい曲調に傾倒していた時代において、39歳で母親になったばかりの彼女の存在感を再び呼び起こした。それはアイコンとなった彼女にとって精神的な意味でもクリエイティブな面でも重要な転換点となり、彼女自身もしばしばこのアルバムを最も誇れる作品として挙げている。 当時はオリジナルアルバムに続いて、よりハードなリミックスアルバムのリリースが企画されていたが、『Ray of Light』があまりに大きな成功を収めたために棚上げされてしまった(この革新的なオリジナル版は、史上最も売れた女性アーティストによるアルバムに数えられ、マドンナに最優秀ポップアルバムを含む三つのグラミー賞をもたらした)。それから25年以上が経ち、リミックスアルバムのプロジェクトがついに再浮上を果たした。本作には、オリジナルリミックス音源のリマスターバージョンに加えて、『Ray of Light』のセッション中にプロデューサーのリック・ノエルズとレコーディングした未発表のデモ「Gone Gone Gone」も収録されている。そして「Drowned World / Substitute for Love」「Nothing Really Matters」など、名作に収められた妖艶な魅力を放つシングルの数々はウィリアム・オービット、サシャ、BT、Victor Calderone、クラブ69こと故Peter Rauhoferの手掛けた刺激的なエディットによってよりディープに掘り下げられ、新たな光を放ち、チルアウトラウンジからダンスフロアミュージックへと華麗に姿を変えている。