TRAD

TRAD

日本を代表するシンガーソングライターの一人、竹内まりや。本作は、彼女の11枚目のオリジナルアルバムとして2014年にリリースされた。時間をかけて積み上げてきた複数の楽曲を、ある時点でまとめるのが竹内まりやのアルバムの作り方だ。集まった楽曲を並べ、そこからテーマを感じ取る。本作は、全体に漂う普遍性から、時代を問わないという意味を込めて『TRAD』と名付けられた。「あまり流行と関係ないところで音楽をやっているつもりです」という彼女は、普遍性を曲作りの柱の一つに据えており「時代を問わず世代を超えて聴ける、そんな普遍性を色濃く感じていただけるようなアルバムになっていると思います」と語ってくれた。リリースから数年後に本作を振り返ったとき、「自分の好きなものは変わらないなと改めて感じ、目指す音楽のあり方も依然変わりはなく、それこそが自分の軸だと思いました」という。山下達郎によるアレンジにも、古くならない工夫が施されていることを改めて感じたそうだ。個々の楽曲は曲調やリズムがバラエティ豊かなのに、通して聴くと大きな流れが感じられるのも本作の特徴だ。彼女はアルバムを通して聴いてもらうことを重視しており、起承転結を楽しんでもらうための曲順検討に時間をかける。“結”に当たる本作のラスト「いのちの歌」は2019年の『紅白歌合戦』で披露された。初出場となったこの舞台での歌唱を聴き、彼女に関心を持ったリスナーも多いだろう。そんなリスナーには、「いのちの歌」に至るまでの心地よいアルバムの流れも楽しんでほしい。本人による楽曲解説と共にお届けしよう。縁(えにし)の糸NHK連続テレビ小説の主題歌です。前からご縁をテーマにした曲を書きたいと思っていたので、その願いが叶いました。撮影場所の一つが出雲ということもあり、故郷・出雲への個人的想いも歌の中に込められたかなと思っています。それぞれの夜テレビのニュース番組のテーマ曲として書き下ろしましたが、報道番組から想起されるかっちりしたイメージよりも、私の曲でいうと「家に帰ろう」のような、明るいバンドサウンドでのアレンジを希望しました。深夜帯の番組だったので、聴かれた方が前向きな気持ちで一日を終えられたらと思ったからです。アロハ式恋愛指南榮倉奈々さんが主役の映画主題歌で、若者たちへの恋愛応援ソングとして作ったのですが、ハワイがテーマの映画だったので、「アロハ」という言葉をぜひ使いたいと思いました。2017年に亡くなられた名ギタリスト、松木恒秀さんにギターソロを弾いていただいた思い出の曲です。ウイスキーが、お好きでしょ1990年から流れているCMソングとして有名な1曲。大学のサークルの先輩である杉真理さん作曲ということもあり、私のバージョンでCMをというお話をいただきました。ジャズコンボ仕立てのアレンジになっていますが、いろいろなアーティストがこの曲をカバーしていますので、聴き比べをしてみても面白いかもしれませんね。Dear Angie〜あなたは負けない東日本大震災の1年後に、杉真理さんからデモテープを聴かせてもらったとき、この曲はぜひ自分で歌いたいと強く感じたので、BOXのメンバーと早速レコーディングしました。その後ニュース番組のエンディングテーマのお話をいただいてシングルリリースが決まりましたが、3.11を経過して生まれた杉さんらしい優しい人生の応援ソングだと思います。最後のタンゴNHKのラジオ深夜便の歌のお話があったときに、番組のリスナー世代を考えて両親が好きだったタンゴで作ってみようと思いました。歌詞は友人でもある作家、伊集院静さんです。作詞のとき、伊集院さんがこの曲からイメージされたという倍賞千恵子さんの「さよならはダンスの後に」という歌は、まさに私が目指していた楽曲イメージと重なります。編曲は往年のタンゴを知り尽くした服部克久さん。その見事なアレンジも含めてお聴きください。輝く女性(ひと)よ!化粧品のCMソングです。同性に向けた女性賛歌とでも言いましょうか、憧れの女性や自分にとって励みになる存在をイメージしながら書きました。力強さのある歌詞に対してメロディ自体は優しい感じにしました。年を重ねるほどに、女性同士で持つ連帯感や、各々の生き方に対する共感を覚えることが多くなりましたが、そんな存在は人生にとっての大切な宝物ですね。夏のモンタージュ2008年に高畑充希さんへ提供した楽曲です。充希ちゃんのバージョンが最高の出来なので、セルフカバーはなかなか難しいのですが、思い切りアレンジを変えてサーフィン/ホットロッドっぽく、(山下)達郎にアレンジしてもらいました。夏の浜辺で聴くにはぴったりの1曲かもしれませんね。コーラスにはもちろん充希ちゃんご本人が参加してくれました。リユニオン2007年に松たか子さんに提供した楽曲のセルフカバー。これは別れた恋人との再会がテーマでちょっと大人なボサノヴァ系の楽曲です。こういう感じの曲をアルバムに挟んでおくと、少し気分がリラックスできますよね。いつもアルバムは心地よい展開にしたいと考えていて、全体的に四季の流れのような曲順も意識しました。「夏のモンタージュ」や「リユニオン」には夏の匂いがありますし、ここから終盤の「深秋」や「静かな伝説(レジェンド)」、「いのちの歌」へと続いていきます。特別な恋人2011年に松田聖子さんに提供した曲のセルフカバーです。聖子さんのヴォーカルスタイルを想定した上でこの曲を書いたので、いざ自分で歌うとすごく難しくて、アレンジもそのまま原曲を踏襲したこともあり、自分なりの歌い方を見つけるのに苦労した楽曲です。それまでは、どちらかというと少女のような可愛らしい曲が多かった聖子さんが歌う「大人のラブソング」を目指しました。たそがれダイアリー姑という立場にいる熟年の女性が主人公だったドラマ主題歌です。夫婦の長い歩みをテーマにした歌を書き始めたのですが、歌詞に生活感があるからこそ、曲調は逆にダンサブルで明るめのポップソングにしました。いつか彼女の日常生活にもが終わりが来るということを歌詞の中でほのめかしているわけですが、そんな言葉を選ぶようになったのも、きっと自分の年齢なのでしょうね。深秋明治時代を生きた、ある夫婦の固い愛の絆を描いたドラマの主題歌です。日本的な哀愁メロディに乗せて日本的な夫婦愛を歌うという、私もそういう年になったんだなぁと感銘を覚えつつこの曲を書きました。そんな感じの曲も達郎がアレンジすると、ビート感の強さといい絶対に歌謡曲然とした音にならない。そこがやはり編曲家としてすごいなと思います。自分と同世代のリスナーを意識して作った楽曲です。静かな伝説(レジェンド)ドキュメンタリー番組のために書き下ろした1曲。ソチオリンピックでの浅田真央さんの演技に感動した直後に書いたので、彼女からインスパイアされた部分もたくさんありますが、この歌はそういう光輝くスターだけではなく、市井の人々の中にいる隠れたヒーロー、ヒロインに捧げる曲でもあります。最後のコーラスを桑田佳祐さんと原由子さんに手伝っていただき、私と達郎を加えた4人でユニゾンしたのもうれしい思い出です。Your Eyes山下達郎、1982年の作品『For You』の収録曲。もともとは私のアルバム用に昔達郎が書いた作品だったのですが、なぜか当時不採用になったそうです。今回のカバーに当たり、アレンジはほぼ彼のバージョンを踏襲して歌いました。この曲はもはや山下達郎クラシックスですし、そのままのイメージを大切にしたいですね。作られた30年後に、こうして私自身もドラマ主題歌として歌えたわけですから本望でした。いのちの歌Miyabiというペンネームで作詞を担当した、茉奈佳奈ちゃん主演の朝ドラの劇中歌なのですが、その後、セルフカバーとして私も歌いシングルリリースをしました。自分が日々生かされていることへの素朴な想いや、あたたかい人々への感謝の気持ちを歌にしています。どんな世代の人たちにも共感していただける普遍的なテーマだと思っています。作った当初は、まさか自分がこの曲を『紅白歌合戦』で歌うことになるとは夢にも思いませんでしたが、たくさんの方々の心に届けられたことを嬉しく思っています。そして、21年ぶりにシングルチャートで1位までいただいて、本当にありがとうございました!このアルバムはApple Digital Masterに対応しています。アーティストやレコーディングエンジニアの思いを忠実に再現した、臨場感あふれる繊細なサウンドをお楽しみください。

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