紫煙をくゆらせる深夜のディスクジョッキーに少年時代の夢を託した、ドナルド・フェイゲンのファーストソロアルバム。スティーリー・ダンの活動停止後間もなく、そのソロキャリアの第一歩として制作に着手されたこともあり、プロデューサーのGARY KATZのみならず、ラリー・カールトンにリック・デリンジャー、ジェフ・ポーカロやマイケル・ブレッカーなどスティーリー・ダン作品でもおなじみだったスタッフ／演奏陣が集結した本作は、よりジャジーなハーモニーにオールドタイミーなムードをちりばめ、かつ、ポップミュージック史におけるフルデジタル録音の黎明期を象徴する一作ともなった。さらに特筆すべきはドナルド・フェイゲン自身の少年時代～青年期にあたる1950～1960年代のアメリカを背景にした自伝的な歌詞だろう。そこには未来への屈託のない希望と米ソ冷戦下の不穏な社会状況が重なり、ロマンチックに聞こえて実はシニカルな歌詞世界の奥深さが横たわる。「美しいものには棘がある」を地で行くアダルトコンテンポラリーミュージックの金字塔といえよう。このアルバムはApple Digital Mastersに対応しています。アーティストやレコーディングエンジニアの思いを忠実に再現した、臨場感あふれる繊細なサウンドをお楽しみください。