2021年のショパン国際ピアノコンクールで4位に入賞した小林愛実は、ワーナークラシックスからの5作目となるこのアルバムで、シューベルトの晩年の作品に焦点を当てている。 本作の中核を成すのは『ピアノ・ソナタ 第19番 ハ短調 D958』の心を揺さぶる演奏だ。小林は冒頭の楽章を、アクセントを効かせることで音の輪郭を際立たせた演奏でスタートさせ、リスナーを引き込んでいく。彼女はシューベルトの音楽を「孤独でありながら優しさに満ちている」と評しており、緩徐楽章における小林の感覚的な解釈からは、まさにそれら両方の感情が感じられる。そして、時折矢のように放たれる怒りは、荒れ狂うような終楽章ではっきりと姿を現し、またここでは、並外れてクリアな演奏を可能にする小林のテクニックによって、細部のニュアンスまでもがはっきりと描き出されている。 小林はよりくつろいだ雰囲気の『4つの即興曲 D935』も完全に自分のものにしており、彼女の落ち着いた演奏とそこから生み出される詩情がリスナーをうっとりさせる。最後に置かれた軽快でチャーミングなデュエット「大ロンド イ長調 D951」には小林の夫でもあるピアニスト、反田恭平が参加し、アルバムに花を添えている。
小林愛実のその他の作品
- 2010年
- Apple Music
- ユリアンナ・アヴデーエワ
- マウリツィオ・ポリーニ & ダニエレ・ポリーニ
- チョ・ソンジン