

18世紀の前半に活躍したイタリアの作曲家ドメニコ・スカルラッティは、生涯を通じて555曲もの鍵盤楽器のためのソナタを書いた。多くはほんの数分ほどの小品だが、その多彩な音楽性は彼の無限の創造力を感じさせ、また楽器としてのハープシコードの可能性を最大限に広げたという意味でも価値が高い。フランスの若き俊英ハープシコード奏者、ジャン・ロンド―は、スカルラッティの膨大な楽曲群の中から、その偉大な才能を俯瞰(ふかん)できる15曲を選び、プログラムの中盤に遊び心にあふれたオリジナル曲を挟み込む形でアルバムを構成している。時に快活で切れ味鋭く、時に繊細でたおやかなロンド―の演奏が、新鮮な印象とともにスカルラッティの音楽の魅力を伝えてくれる。