RUBY POP

RUBY POP

「今の私の宝石箱です」。サードアルバム『RUBY POP』について、アイナ・ジ・エンドはApple Musicに語る。BiSH解散後初となる本作には、17曲のバラエティに富んだ楽曲が収録された。「この一曲一曲と向き合ってきた日々が、私にとって宝物。そのすべてをピカピカに磨いて並べてみたら美しくまとまったので、“私の好きな宝石であるルビーがあなたの元ではじけますように”という思いを込めて、『RUBY POP』と名付けました」 前作『THE ZOMBIE』(2021年)以降、アイナは多くの経験を積んだ。ブロードウェイミュージカルへの出演や、初の日本武道館単独公演など、その一つ一つが大きな挑戦だった。中でも映画『キリエのうた』で初主演を務め、音楽監督の小林武史とKyrie名義のアルバム『DEBUT』(2023年)を制作したことは得難い経験だったと言う。「小林武史さんと岩井俊二監督は私のお父さん世代なんですけど、お二人が青春を過ごした1990年代は今よりも時間の使い方がおおらかだったと気付きました。今のレコーディングは結構タイトなスケジュールで進みますが、小林さんと現場に入る時は、犬に餌をやったり喋ったりして、今日は歌わなくてもいいやって帰ったりもする(笑)。その経験をして、音楽ってここまで自由でいいんだと思えたし、それなら私もレコーディングに犬を連れて行っちゃおうと思い付きました」。そのおおらかさが、これまでずっと自らと厳しく向き合ってきたアイナを緩やかに変えていった。 唯一無二の宝石箱を手にしたアイナは今、「音楽と人が好きだと改めて感じている」と言う。「私がおでこを怪我した時、いろんな友達がゲームを持ってきて遊んでくれたり、一緒にクレープを焼いてくれたり。ライブも延期にしてしまったのに、ファンのみんながちゃんと迎え入れてくれた。『私は人に助けられてるんだ』と思ったその時に、『宝石の日々』のメロディがふっと出てきたんです。このアルバムには、そんなふうに自分の気持ちをしっかり乗せた楽曲がたくさん詰まっています」。ここからはアイナにいくつかの楽曲を解説してもらおう。 風とくちづけと 一緒に活動してくれているバンド、モグリアンズと作ったこの曲を1曲目にしました。今回バンドメンバーと制作合宿をしたり、ものすごく会話したりして、心の底から“音楽が楽しい”と思える瞬間が増えました。そんな日々にキスをして、大切に守っていきたいという気持ちを込めています。コーラスは男の人も女の人も歌えるキーにして、ライブでみんなと歌う妄想をしながらレコーディングしました。 Poppin’ Run 車のCMソングとして書き下ろした曲で、黄色い車がさっそうと駆けていく映像を何度も何度も見ながら作りました。「テンポこのくらいかな」「この鍵盤の音がいいかな」と探りながら、自分の人生を投影できるような曲を目指しました。 Entropy 私の日常を書いています。公園のベンチに座って、街行く犬を見る時、「かわいいけど似合わない服を着てるな、ちょっとサイズが大き過ぎないかな」とか思うんです。だけど思い返すと、私も自分に見合わないステージに立っているようで不安になることがある。そんな時に「私大丈夫かな、無理してないかな。ちょっと休んでみようかな」と、犬を見て自分を顧みる曲です。歌いながらちょっと笑ってるの、みんなにはバレちゃうかな(笑)。 ハートにハート 作曲してくれたなかむらしょーこちゃんは、バンドメンバーだけど、それよりも友達と思わせてくれる柔らかさがあります。だから一緒に作るとめちゃくちゃ体温がこもる。「夜と結婚する」というフレーズを作ったのは22歳くらいの時で、その頃は夜を独りで越えるのがすごく怖くて、ただずっと耐えていました。でも暗闇を愛せれば、夜と結婚すれば怖くなくなるかもと思った時に、このフレーズが浮かんできたけど、その時はまだ曲にできなくて。それから時が経ち、今なら私はどんな夜でも立ち向かえると思ったから、初めて歌詞にできました。 Love Sick Red:birthmark この2曲はTK(from 凛として時雨)さんが楽曲提供してくださいました。TKさんはデモをご自身で歌ってくださり、それにものすごいパワーと生命力があるので、私はそれをくみ取って自分に落とし込んでいきます。そうすると、頭で考えずとも体が勝手にシャウトしちゃう。レコーディングは本当にきつくて、声帯がちぎれそうになります(笑)。でもライブで何度も歌っているうちに完璧に歌えるようになるので、TKさんはそれを見越して、私に限界を突破させてくださる。本当にありがたいです。 煽り癖と泣き虫 犬に見守られて歌いました。犬は私と一緒にボーカルブースに入るんですけど、私は音源をイヤホンで聴くので、犬はアカペラ状態の歌を聴いています。それが子守歌になるようで、ずっと寝てる(笑)。本当にかわいいです。 Jewelry Kiss 超女の子っぽいかわいい曲が欲しくて、しょーこちゃんと作りました。部屋を真っ暗にして、プラネタリウムみたいに天井に光を映して、二人で話し込み、普通の時間をなだらかに過ごしてみたんです。その空気が音楽ににじみ出て、まったりしたタイム感が出ました。この曲も犬に見守られながら歌をとることで、ボーカルブースが家のような空間になり、等身大の女の子の曲ができました。 クリスマスカード 槇原敬之さんに楽曲提供していただきました。心に天使が舞い降りるような、最高の曲です。私はクリスマスが大好きで、ジョン・レノンさんとオノ・ヨーコさんの「Happy Xmas (War Is Over)」を一年中聴いているし、インイヤーモニター(楽曲制作の際に使用するイヤホン)を緑と赤のクリスマスカラーにしているほど。そして槇原さんの冬の歌が大好きなので、大好きな人に大好きなシーズンの歌を作っていただき、宝物になりました。「誰かを想えるその気持ちを クリスマスと呼ぶ」という歌詞を読んだ時、もうこれはクリスマスの捉え方が変わるなと思いました。 宝者 ドラマの主題歌として書き下ろしました。とても人間味の深い温かなドラマで、台本をいただいた時から音楽を添えるのはかなり難しいと分かっていました。それでも引き受ける覚悟を決めたのですが、不安と苦労に襲われ、メロディの書き直しが続いて生活が乱れました(笑)。でも本当に作って良かったし、ドラマにも出られてめっちゃよかった。ドラマが音楽と誠実に向き合う内容だったので、私も久々にボイトレに通い、おかげでまた歌がうまくなっちゃいました(笑)。 はじめての友達 裸の心を歌にしました。今の自分を等身大で表現した、大切な楽曲です。ギターで参加してくださった名越由貴夫さんと田中義人さんは、初期からずっと、私の音楽に血液を流し込んでくれるような大切な存在です。

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