Rejoice

Rejoice

「いろんなことを思いながらも最終的には手を上げて喜び合う、そんなアルバムになったんじゃないかな」。Official髭男dismの藤原聡(Vo/Pf)はアルバム『Rejoice』についてApple Musicに語る。『Rejoice』は“喜び”や“朗報”を意味する言葉で、ここに至るまでにはさまざまな出来事があったと彼は振り返る。「(新型コロナウイルス感染拡大の影響で)みんなで声を出して一緒に騒ぐライブは4年くらいできなかった。だからみんなの我慢が全部報われますように、という思いを込めました。そして僕が(声帯ポリープの療養のため)一時期休養したことも大きく影響した。歌ったりライブをしたり、それまでできて当たり前と思っていたことができなくなるのはこんなにしんどいのかと。それだけに戻ってこられた時の喜びたるやすさまじいものだったので、その喜びが各曲ににじみ出ていると思います」本作は『Editorial』(2021年)以降、3年の間に発表した多くのヒットシングルのほか、アルバムならではの楽曲も充実している。「すごいボリュームになっちゃって、本当に制作が終わるのかなと思うほど大変な時期もありました」と小笹大輔(G)は明かす。「この時代にせっかくフルアルバムをリリースするんだから、少しニッチな曲というか、『この曲は自分のためにあるんじゃないか』とか『この曲の良さを最もよく知っているのは自分だ』とか思ってもらえるような曲もたくさん収録したかった。ぎりぎりまでがんばった結果、仕上がりに自信を持てる大好きなアルバムができて、今はほっとしています」。アルバムの冒頭を飾る「Finder」で彼らは「僕らの未来がまたここから 始まる」と歌う。みんなで喜び合えるこの時までに、たくさんの悲しみや苦しさがあった。そして、これからも乗り越えなければならない壁が次々と現れるだろう。「人生において四苦八苦しているのが実は楽しい。その気持ちをみんなで大事にしたい」と藤原は未来を見据えて笑う。確かな強さと温かさを宿した本作について、ここからは2人にいくつかの楽曲を解説してもらおう。 Finder Get Back To 人生 藤原:「Finder」のオープニングは前作『Editorial』の最後の曲「Lost In My Room」からつながっています。 小笹:曲順はとてもこだわって、ライブのセットリストを作るつもりで考えました。実は当初「Finder」の次は「Chessboard」にしようと思っていたけど、制作も終盤になり『Rejoice』というタイトルが僕らの体に染みてきた時、このアルバムはもっとアッパーな曲でスタートした方がいいんじゃないかという思いが生まれました。だからここは大事なつながりを持っています。 キャッチボール 藤原:僕は最近ツアー中に、ライブのウォーミングアップを兼ねて、マネージャーとキャッチボールを始めました。もともとボール投げが苦手だったんですけど、それでも公演ごとにやっていると少しずつましになっていくんです。いろんな工夫を試して、できたと思っても気付くとまたできなくなって、がんばって戻してという四苦八苦が楽しくて。音楽も同じで、毎曲、毎公演、これからもずっとワクワクしながら、いろんな挑戦と失敗をしていきたいというマインドを込めました。 Sharon 小笹:こんなにもいいメロディが自分のバンドからまだ出てくることに、まずびっくりしました。ブリッジミュートをかけたギターがどこか懐かしく、いなたい雰囲気を生んでいて、ベースラインはR&Bっぽい感じがある。このバランスはたぶん僕たちが子どもの頃に聴いていたポップスが大きく影響しています。ど真ん中のポップでありながらヒゲダンらしさを出せた、新しい音像になっていると思います。 濁点 藤原:夜ふかしの背徳感がにじみ出た曲です。曲のムードは一定しているけど、ちゃんまつ(松浦匡希)のドラムがじんわりとスピードを上げていく。いい意味でのぬるさがあって、アルバムならではの曲だなと思います。北海道の芸森スタジオでプリプロをしたんですけど、ロケーションもスタッフも最高で、みんながのびのびとリラックスしている感じもある。楢ちゃん(楢﨑誠、B/Sax)がスタジオに置いてあったスプレー缶を弾く音とか、実はいろんな音をミックスして使っています。 Anarchy (Rejoice ver.) 藤原:ライブアレンジバージョンを収録しました。僕たちのサポートメンバーには素晴らしいプレイヤーがたくさんいて、彼らと一緒にテンションを上げられるアレンジをツアーで披露しているうちに、それも音源として残したくなり、往年のマーシャル(アンプ)で録りました。このリアレンジでは自分のことを1980年代のハードロックスターだと思って、スタジアムを見据えてやっています。ライブでみんなと一緒に歌いたいな。 うらみつらみきわみ 藤原:人間関係というのはなかなか難しいもの。なるべく前向きに変換できればいいけど、できない時もあんまり自分を責めないようにしようと思います。最後の1行はなくそうかなと考えていたけど、大輔が「これはあった方が絶対いいだろ」と言ってくれたことをすごく覚えています。 小笹:面白くてかわいげのある曲なので、最後の1行は明るく言っても嫌な感じがしないからぜひ残してほしかった。この曲で歌われていることって、みんな経験したことのある気持ちだと思うんです。今感じていなかったとしても、人生経験を重ねていく中で共感してくれた時、「そういえばあのヒゲダンの曲、2024年に聴いてたな」とか思ってくれたらすごく素敵だなと思います。 B-Side Blues 藤原:大人になると楽しい時間が終わった時に「やだやだ帰りたくない」って駄々をこねられない。その言いづらい気持ちを心のBサイドと表しています。それともう一つ、僕らが好きだったBunkamuraスタジオ(2023年閉鎖)の「B」でもあります。スタジオに限らずですが、僕らの思い出の場所は時とともになくなっていってしまう。すごく寂しいけど、僕らはそこで培ったものの続きを、また別の場所で作っていかなきゃならない。Bunkamuraスタジオで過ごした日々は忘れないし、この曲を聴けば思い出がよみがえるから、思い出を大事にしながら進んでいくことが大切なんだなと思える曲になりました。

国または地域を選択

アフリカ、中東、インド

アジア太平洋

ヨーロッパ

ラテンアメリカ、カリブ海地域

米国およびカナダ