コロナ禍の状況を色濃く反映した2020年の『STRAY SHEEP』から4年ぶりとなる6作目のアルバム。タイトルは“失われた場所”、あるいは“遺失物置き場”、つまり“失われたものが集まる場所”という意味がある。4年間のうちに発表した多くのヒットシングルを収録し、それらの楽曲には共同プロデューサーとして坂東祐大、Yaffle、常田大希ら多彩なミュージシャンが参加した。一方、初収録曲には米津玄師単独プロデュースの作品が多く、時代を象徴するクリエイターとなった彼の心の内が明かされる。それはこの世界の現状と同じく複雑で、答えはなく、見通しも定かではない。けれど同時に、現状を冷静に受け止め、絶望からするりと身をかわす軽やかさも感じられる。道に迷いながら同乗者と車を走らせる「とまれみよ - Stop Look Both Ways」、そして「探しに行こうぜマイフレンド」と歌い出す「LOST CORNER」など、米津は気心の知れた相棒に話しかけるように気さくに歌う。向かう先はすでに失われた場所なのか、それとも失ったものに出会える場所なのか。考えを巡らせながら聴けば聴くほど、米津玄師の描く世界に深く入り込める。
- 2020年
- 2023年