Positions

Positions

アリアナ・グランデの前作『thank u, next』は、元恋人マック・ミラーの悲劇的な死を受けた直後にリリースされた、瞑想的で痛切なアルバムだったが、続く本作『Positions』は、翻って明るさと遊び心に満ちあふれ、対岸から意味ありげに手を振っているかのようだ。その喜びはある意味当然とも言えるだろう。大半のミュージシャンが打ちひしがれてしまうであろう過酷な時期(自身のコンサートでの死傷者を出したテロ攻撃事件、ミラーの薬物過剰摂取、公に知れ渡った当時の婚約者ピート・デヴィッドソンとの破局)の間に、グランデは2018年と2019年のベストアルバムに数えられる2作をリリースし、トップクラスの興行収入を挙げたツアーも成功させたのだから。このアルバムを聴いていると、時間と内省には確かに人を癒やす力があり、彼女がようやく過去からの解放感を味わって、前進できるようになったのだと気づかされる。グランデは一秒も無駄にせず、トーンを変えてみせる。「悪魔のおかげで見方が変わったのよ/だから私をかわいそうだなんて思わないで」と、彼女が優しい声で歌う「shut up」はオーケストラを取り入れた壮大なオープニング曲で、煽(あお)ってくる人々を黙らせてしまう。アルバム全体を貫くテーマは、強さと自信であり、彼女はそのポジティブな変化を潔く自分の手柄にしている。彼女は深く考え、自らのカルマに気づき(「just like magic」)、健全な習慣とセクシーなエネルギーが生む幸福感に浸り(「nasty」「34+35」)、傷つくことを恐れず新しいロマンスへ飛び込んでみせる(「nasty」「off the table」)。そこから読み取れるのは、表面的な無関心というより、彼女が今この瞬間を生きているという事実であり、つまり痛みと喪失は人生の一部ではあるが、楽しみや愛もまた同じく存在するということだ。そのいずれに関しても、自分でコントロールできるものはほとんどないのだと、彼女ははっきり自覚しているように見える。シンガーソングライターのTayla Parxやヴィクトリア・モネ、そしてプロデューサーのTommy Brownといった長年のコラボレーターを伴って、息遣いが聞こえるレトロファンク(「love language」)、落ち着いたR&B(「west side」)など、グランデは新たなリズムとムードを巧みに探求してみせる。Doja Catとデュエットした「motive」では、揺れ動くトラップと四つ打ちのクラブビートを優雅にシャッフルしている。そしてアルバムのハイライトとなる「my hair」では、1990年代後半のガールズグループのパワーバラードのような感覚で、グランデはそれぞれのパートを難なく歌い上げる。重要なのは、決して彼女が無理に背伸びをしている感じがしないことだ。彼女はパワフルな声と自信に満ちた美学を兼ね備えた希少なアーティストであり、どんなサブジャンル、コラボレーター、ルール、そしてトレンドも皆、彼女に屈してしまうのだ。

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