PLANET'S MAD

PLANET'S MAD

ブルックリン在住のDJ/プロデューサー、バウアーは、2作目のアルバム『PLANET’S MAD』の制作にあたり、まず映画に目を向けた。「僕の最大のインスピレーションが映画だったんだ」と彼はApple Musicに語る。「SF映画『フィフス・エレメント』みたいに別世界に飛ばしてくれるやつとか」。「Harlem Shake」をヒットさせた彼は、Porter Robinsonのコンセプチュアルな『Virtual Self』プロジェクトからヒントを得て、彼自身のパラレルワールドを作り上げるアイデアを固めていったという。「リスナーがどっぷり浸れる世界を作れたらおもしろいと思ったんだ」。ポルトガル人プロデューサーのHollyの助けを借りて、彼が描いた爽快なサウンドスケープは、サンプルベースのトランスやエレクトロを楽しくキャッチーにしたファットボーイ・スリム、ケミカル・ブラザーズ、ダフト・パンクら90年代後半のダンスミュージックの大物たちを想起させる。「彼らはサポートアクトを多用したわけでも、一つのジャンルにこだわったわけでもなかった」とバウアー。「それよりも周囲の環境を整えたりエネルギーを生み出すことが大事だったんだ」。ここでは、彼がアルバム全曲の解説をしてくれる。PLANCK僕は壮大でドラマチックなイントロが大好きで、この曲は華々しい幕開けみたいな印象を与えると思う。シネマチックな感覚が欲しかったから、映画スコアの制作用プログラムで作ってみた。友人の凄腕ピアニストEli Teplinが、オーケストラ風のパノラマチックな曲を書いてくれて、それを基に仕上げたんだ。PLANET’S MADこれはLAのスタジオであれこれやってたときに作ったデモから始まった。自分に少し喝を入れようと、たまにSNSでライブ配信したりするんだけど、それがうまくいくときがある。オーディエンスがいてフィードバックをもらえると、さらにやる気が出てくる。コンセプトとしては、世界が意思を持ったらどうなるか?というアイデアをずっと温めてたんだ。映画『ソラリス(Solaris)』を観て、知性を持つ惑星というのがすごくクールだと思って。最終的にこれがプロジェクト全体のタイトルになったのは、いろんな意味を含んでるところが気に入ったから。環境的なものだったり、型破りな熱狂だったり。いろんな感情を掻き立てて、それをみんなに感じ取ってもらいたかったんだ。MAGIC このデモを作った後で、Cid Rimに送った。彼はLuckyMe(レーベル)所属の最高のジャズドラマーで、大胆なバイオリンサウンドを付けて送り返してくれたんだけど、それがすごくクールだったんだ。シュールでサイケデリック、完璧な架空の惑星みたいなサウンドだと思った。読んだことがあるかもしれないけど、『Dinotopia』という子供向けの絵本の中で、人間と恐竜が共存する世界が描かれてるんだけど、そこには緊張感もある。そんなイメージかな。YEHOOLAでラップトップを使ってこのトラックを作ってたら、宅配便が届いた。ドアを開けると配達の人が、僕がエイブルトン(音楽制作ソフトウェア)をパソコンで開いてるのを見て、バンドをやってるって言うんだ。「Zap Mamaっていう名前だから、チェックしてみてよ!」って。それで調べたら、すごくよかった。アフリカ音楽にインスパイアされた大所帯のバンドで、とても気に入ったから、僕が作ってたものに彼らのトラックの一つを入れてみたんだ。最高なものができたよ。PIZZAWALA僕がこれまで一番大きな影響を受けたのはティンバランドだ。一番まねしたいのが彼のサウンドで、この曲はちょっとした感謝の言葉みたいなものなんだ。ボーカルはInkという、LAで一緒にやってたソングライターで、低いノイズとハミングは古いトランスのCDから取った。パーカッシブで、エネルギッシュ。そこが今作の世界観の設定に寄与する気がした。それから徐々に、各曲が異なる環境を描き出すようになっていった。まるでレイヨウ(カモシカ)が野原を駆けていくようなサウンド。いや、動物じゃなくて、エイリアンのレイヨウだね。REACHUPDONTSTOP友人のアンドリューが膨大なレコードコレクションを持っていて、そこから見つけ出したのがこのサンプルだ。アカペラが耳に飛び込んできて、すごくエネルギッシュでおもしろかった。最終的にジャージークラブっぽいビートになったデモをプロデューサーのHollyに送ったら、まったく別次元のものを加えてくれた。トランスコアみたいなサウンドを美しく組み立ててくれて。これを聴いて、プログレッシブトランスを思い出したよ。エレクトロニックミュージックを発見したばかりで、夢中になってた10代の頃によく聴いてたんだ。HOT 44この曲のきっかけは、ラリー・キング (ニュースキャスター) によるティナ・ターナーへのインタビューだった。彼女は瞑想の話をしてて、「リズムやサウンドに入り込んでいくと…」とか言いながら、マントラの話を続けたんだ。それを観て「すごい、最高だ」と思ったよ。彼女の声が超クールだったから、動画投稿サイトから拝借してちょっとしたデモを作って、Splice(サンプル素材プラットフォーム)で見つけたパーカッションのサンプルと合わせてみた。すると、LuckyMeのトップのドム(Dominic Flannigan)に、Randomerのトラックをチェックしたらと言われた。そのドラムがとにかくヤバかったんだ。そのとき僕がやってたものとまったく同じフィーリングで、というか、もっとかっこよかった。自分でリメイクしようとしたけどできなかった。うま過ぎたんだよ。ありがたいことに本人と連絡が取れて、「ああ、全部使ってもいいよ」って言ってくれた。でもティナ・ターナーの方はうまくいかなかった。彼女のボーカルを作り直さないといけなくて、そこは残念だったよ。彼女の声の質感が失われてしまって。でもそんなときもあるよね。AETHERピッチをいじってたボーカルから最高のメロディを手に入れたんだけど、どうしていいのかわからずにいた。かなりベーシックなビートだった。数か月経ってから、もう一度取り組んで、さらにエキサイティングに、よりスペシャルなものにしようと決めた。それでちょっとしたドラムンベースのブレイクを乗せてみたんだ。その時思い描いたのはThe Prodigyだった。彼らは世界で興隆するエレクトロニックミュージックに大きな影響を与えた存在で、大好きなんだよ。そして魔術師のHolly(プロデューサー)に送ったら、次のレベルに引き上げて、3Dにしてくれたんだ。今作の中でも、大きなステージで爆音で鳴らしたくなるのはこれだね。COOL ONE SEVEN ONEこれが僕の基本的なタイトルの付け方なんだ。本当は全部こんな感じにしようとしてるんだけど、レーベルがやらせてくれないんだよ。これも自然を思い浮かべた曲で、そう、ゴクラクチョウ(極楽鳥)が求愛ダンスをしてるみたいな。そんなシーンを僕なりに描いてみた。REMINAこれはリスナーをこのプロジェクトの最終章に引き込むために必要な曲。Hollyがこのアンビエントサンプルを見つけてきたから、それを単純に逆再生することで浮遊しているような感じを出してみたんだ。HOME (feat. バイポーラ・サンシャイン)ピアニストのEli Teplinがあれこれいじってたのを、僕が録音したことがあって、それを繰り返し聴いていくうちに何かできそうだと確信したんだ。すごくいい気分だったよ。誰かに歌ってほしかったけど、ふさわしい人がなかなか見つからなかった。ようやくバイポーラ・サンシャインのボーカルをレコーディングできたときは、雰囲気が10倍に跳ね上がったよ。それから、土壇場になってHudson Mohawkeに渡してみたら―彼は最初からずっと僕のインスピレーションであり続けてる人―最後の仕上げに手を貸してくれた。笑っちゃうよね。やっと共演できたトラックが、こんなにソフトでチルアウトしたバラードだなんて。だって、ドラムスさえ入ってないんだから。でも最高だったよ。GROUP「GROUP」はこのアルバムで出したかった雰囲気のすべてをまとめた曲だ。美しくソフトなサウンドスケープと、アグレッシブでエキサイティングなドラムス、その一つ一つが歪められ引き伸ばされて、ちょっと異質な感じがするかも。唸るようなダブステップのドロップが、新しい解釈っぽくて気に入ってるよ。悲しげな感覚もあるから、最終曲にしたかった。僕の頭の中でストーリーラインが感情の弧を描いてるんだ。深宇宙から現れた惑星が、恐怖と混乱を引き起こしていく。だけど、時が経つにつれて誰もが心を奪われていく。最終的には去りゆく惑星に、どう別れを告げるのかというのがこの曲のテーマなんだ。たくさんの意味が込められてるよ。

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