アストラ・ピアソラの音楽は、情熱的なアルゼンチン・タンゴと進歩的な20世紀のクラシック、そしてヨハン・セバスチャン・バッハの時代を超越した技を見事にブレンドしている。卓越した技術と音楽的好奇心にあふれたフランスのトランペット奏者Lucienne Renaudin Varyこそ、ピアソラの多様性を表現できるアーティストだ。本作ではピアソラの古典ともいえる「Oblivion」と「Maria de Buenos Aires」の感動的なバージョンに加え、作曲家と同時代の（同じアルゼンチン人でもある）アルベルト・ヒナステラによるソウルフルな「Danzas Argentinas」なども聴くことができる。Renaudin Varyは、ピアソラのかつての恩師で作曲家ナディア・ブーランジェによる「Lux aeterna」ではフランス風のフレーバー、バッハの「無伴奏バイオリン・ソナタ第１番ト短調」では高い演奏技術を披露。アルバムの最後は、ピアソラに最初のインスピレーションを与えたカルロスガルデルによる美しいタンゴで幕が閉じられる。