アルバムの冒頭を飾る「愛の挨拶 作品12」が始まってほんの10秒で、その繊細なタッチと豊かな表現力に心を揺さぶられるだろう。東 亮汰はこれまでにいくつもの賞に輝き、また、反田恭平が率いるジャパン・ナショナル・オーケストラのメンバーとしても活躍する新進気鋭のヴァイオリニストだ。2023年には、テレビアニメ『青のオーケストラ』の主人公、青野一のヴァイオリン演奏を担当して大きな注目を集めた。このメジャーデビューアルバムでは、ロマン派のレパートリーを中心に伝説的なヴァイオリニストたちによる楽曲や、映画音楽の名曲などを取り上げている。本作は東が桐朋学園大学大学院音楽研究科修士課程在学中にリリースされているが、日の光を浴びて輝く絹糸を思わせるような音色や、難易度の高いパッセージを鮮やかに弾きこなす技術、そして随所に見られる切れ味の鋭さで、すでに一流ヴァイオリニストの手腕を見せている。