Paganini: 24 Caprices — Caprices by Berlioz, Cervelló, Kreisler, Ortiz, Saint-Saëns, Sarasate, Wieniawski

Paganini: 24 Caprices — Caprices by Berlioz, Cervelló, Kreisler, Ortiz, Saint-Saëns, Sarasate, Wieniawski

ニコロ・パガニーニが悪魔に魂を売ったといううわさは、彼がソロヴァイオリンのために書いた『24のカプリース』の中の曲を弾くたびに、信ぴょう性を高めていった。この悪魔のようなヴァイオリニストの強烈な演奏と完璧に楽器を弾きこなす姿に接した観客の中には、失神する者も多くいた。スペイン出身のヴァイオリニスト、マリア・ドゥエニャスは、残酷なほどに演奏が難しい楽曲であるこの『カプリース』に、命を吹き込むための技術と気質を兼ね備えている。彼女はまた、この作品の派手な見かけの内側に潜む豊かな音楽的本質を引き出すすべも心得ている。 2002年にグラナダで生まれたヴァイオリニスト、ドゥエニャスは、2023年にベートーヴェンの協奏曲でアルバムデビューを飾った。これほど若いヴァイオリニストがデビュー作にこの協奏曲を収録するというのは、勇気ある姿勢だ。そして彼女の2作目は、パガニーニの『24のカプリース』の驚くべきパフォーマンスを収録したアルバムとなった。さらにこのアルバムには、他の作曲家たちが、パガニーニの楽曲や“カプリッチョ(奇想曲)”と呼ばれる音楽の気まぐれな性質にインスパイアされて書いた、同じように演奏が極めて難しい作品も多く詰め込まれている。 マリア・ドゥエニャスは、幼い頃からパガニーニの『カプリース』と共に育った。彼女はこの曲を、ヴァイオリンを初めて手にした時から聴き始め、その後すぐに弾き始めた。「この曲は何年もの間、私に寄り添ってくれました」とドゥエニャスはApple Music Classicalに語る。「ベートーヴェンの協奏曲を録音した後、自分にとってもっと私的な曲もレコーディングしたいと思いました。『24のカプリース』にはとても親しみを感じています。もちろん最初は、技術的な面を完璧にするため、他の人たちもそうするように、いわば自分のために弾くことから始めました。その後、コンクールで弾いたり、演奏会のアンコールピースとして演奏したりするようになりました。私はこの作品と、とても親密な関係を築き上げてきたのです」 ドゥエニャスによれば、パガニーニは『カプリース』を公表するためでなく、個人的な研究のために着想したという。この作品は、同時代のヴァイオリニストたちに演奏不可能だと思われていたが、パガニーニはこの中からいくつかの曲を演奏会で披露し、演奏が可能であることを証明した。やがてこの曲は、ヴァイオリニストの技術を測るのに最もふさわしい楽曲としての地位を確立する。一方、その高い音楽性は、ショパンの練習曲と同様の評価を得た。有名な最後の「カプリース」は、印象的な主題と11の変奏曲から成り、演奏家に対してボウイングと左手の技術に関する厳しい課題を課す。また、この曲のキャッチ―なフレーズは多くの作曲家たちにインスピレーションを与え、ラフマニノフ、ルトスワフスキ、イザイ、アンドリュー・ロイド・ウェバーなどが変奏曲を書いている。 ドゥエニャスは、正確に演奏するだけではなく、それぞれの「カプリース」から歌心のある旋律を引き出している。例えば「No. 3」の冒頭で、2本の弦によるオクターブ奏法で奏でられる哀愁の旋律や、「No. 6」におけるドゥエニャスの異次元のトレモロから、メロディと速弾きの伴奏が明瞭に浮かび上がるのを聴いてほしい。「ヴァイオリンにはたくさんの可能性があります」と彼女は言う。「ヴァイオリンは人間の声にとても近いと思います。ですので、演奏するときは必ず歌うことをイメージしています。できるだけ自分の声や感情に近いものとして感じるべきなのです」。ところで、彼女自身は歌うのだろうか。「歌うのは好きですよ」と彼女は答える。「でも、下手なの!」 イタリア語の“capriccio(カプリッチョ)”は、空想を巡らせることや、瞬間的に創造されるものを意味する。「私は“カプリッチョ”という言葉から、即興的な感覚や、とても自由で、夢想するような雰囲気を感じさせます」とドゥエニャスは語る。「パガニーニの『カプリース』はどれも個性的で、多様な技術的側面を含んでいます。もちろん、技巧は不可欠で最も重要なことですが、それ以上のものを示さなければいけません。パガニーニは同時代のベルカントオペラから影響を受けています。そのスタイルは、彼の音楽全体を通じて語られるべきことだと思います」 マリア・ドゥエニャスは11歳で母国を離れてドイツに留学し、その3年後にウィーンに移り住んでボリス・クシュニールに師事した。ウクライナ出身のオーストリア人ヴァイオリニストであるクシュニールは、このアルバムで、スターとなった弟子と共にヘンリク・ヴィエニャフスキの『8つのエチュード・カプリス Op. 18』の「No. 2」を熱演している。ギタリストのラファエル・フイヤートルは、フリッツ・クライスラーの『ウィーン奇想曲』を魅惑的なアレンジでデュエットし、ミハイル・ゲルツが指揮するベルリン・ドイツ交響楽団は、ドゥエニャスと共にサン=サーンスの永遠の名曲「序奏とロンド・カプリチオーソ」、同じくサン=サーンスによる叙情的な作品「アンダルシア奇想曲」、そして、ベルリオーズによる表情豊かな楽曲「夢想とカプリス」を演奏している。またこのアルバムには、ドゥエニャスのために書かれた二つの新作も収録されている。ガブリエラ・オルティスによるヴァイオリンとピアノのためのドラマチックな奇想曲「De cuerda y madera」と、ジョルディ・セルべリョによる同じく奇想曲風の楽曲「Milstein Caprice」である。 ドゥエニャスは言う。「過去と現在からチョイスした曲で、奇想曲が持つすべての可能性を示したかったのです」。彼女はまた、サン=サーンスの曲をはじめ、スペインの気質を反映したいくつかの曲を選んでいる。「スペインに帰るたびに強く感じるのは、人生を大切にする感覚です。誰もが人生に感謝し、人生を楽しんでいることです。この楽しむという感覚は、スペイン人の間に深く根付いているものだと思います。私の考え方も同じであり、それをこの音楽で表現しようとしたのです」