

インダストリアルロックのアイコン、トレント・レズナーと、ドイツ系イラク人のEDMプロデューサー、Alexander RidhaことBOYS NOIZEとのコラボレーションが、ついに2026年4月11日のコーチェラフェスティバルで完成形にたどり着いた。それまでも複数のサウンドトラックや2025年から2026年にかけて行われた『Peel It Back Tour』で共演していたが、コーチェラのステージでは再構築されたナイン・インチ・ネイルズの代表曲がフルセットで披露され、悪魔のシルク・ドゥ・ソレイユを思わせる熱狂的なステージ演出が話題となった。 スタジオ録音とライブ録音の音源を組み合わせ、コーチェラでのセットリストとまったく同じ曲順で構成された『Nine Inch Noize』は、キャリアを網羅するベスト盤であり、リミックスアルバムでもあり、そしてライブドキュメンタリーでもある。それらの境界線を曖昧(あいまい)にしながら、おなじみの人気曲を異質な文脈の中へと置き直している。アルバム『The Downward Spiral』収録の冒涜的で激しいナンバー「Heresy」は、レズナーの妻、Mariqueen Maandigのゲストボーカルによって魅惑的な輝きをまとい、『Hesitation Marks』収録の「コピー・オブ・ア」の冷徹なエレクトロミニマリズムは、じわじわと盛り上がるテクノドラマへと変貌を遂げている。 しかし『Nine Inch Noize』はそれだけにとどまらず、レズナーが自身のキャリアの中でもあまり知られていない側面を新たな光で照らし出すチャンスにもなった。『Year Zero』の隠れた名曲の数々を忠実に作り直したものから、レズナーとMaandigのプロジェクト、ハウ・トゥ・デストロイ・エンジェルズからの「Parasite」の脈打つようなリブートまで、その内容は多岐にわたる。そしてナイン・インチ・ネイルズがかつてカバーしたソフト・セルの「Memorabilia」に再び向き合ったレズナーは、Ridhaの奇抜で未来的な感性に完全に身を委ねながらも、自身の1980年代シンセポップのルーツを守り抜いてみせている。