U2の1990年代は、1980年代の自分たちとの決別を告げる本作によってセンセーショナルに幕を開けた。ギターミュージックのルーツをストイックに突き詰めていった『The Joshua Tree』から一転、ロックとエレクトロニックミュージックのクロスオーバーへと舵を切る。その試みは、インダストリアルビートを取り入れた「ザ・フライ」やファンキーなグルーヴを獲得した「ズー・ステーション」、さらには時のアシッドハウスやマッドチェスターとの共振を感じさせる「ミステリアス・ウェイズ」のようなナンバーまで、驚きのモダンポップの境地に達している。デヴィッド・ボウイの「ベルリン3部作」で知られるハンザスタジオでレコーディングされた本作は、1989年のベルリンの壁の崩壊を受けて東西冷戦の転換点を迎えた時代の混沌を、そのクロスオーバーサウンドに体現していたのかもしれない。そしてその混沌の中で「僕らは同じではないけれど、愛は一つだ」とユニティを歌った「ワン」は、多様性と分断の狭間で揺れる現代社会にとって、今なお普遍的なメッセージであり続けている。このアルバムはApple Digital Masterに対応しています。アーティストやレコーディングエンジニアの思いを忠実に再現した、臨場感あふれる繊細なサウンドをお楽しみください。
ディスク1
ディスク2
- 1991年
- ブルース・スプリングスティーン
- Midnight Oil