

一緒に音楽作りをするパートナーを選ぶのは容易なことではない。しかし、モーツァルトの弦楽五重奏曲を収録するニューアルバムのためにヴィオラ奏者を探すことになった際、エベーヌ四重奏団には、旧友のアントワーヌ・タムスティと組むという解決策が用意されていた。 エベーヌ四重奏団とタムスティは2004年にARDミュンヘン国際コンクールで初めて共演した。いずれもそれぞれの部門で第1位となり、モーツァルトの弦楽五重奏曲を含むいくつかの曲を5人で奏でたことで、すぐに信頼関係が築かれた。 モーツァルトの六つの弦楽五重奏曲のうちこのアルバムに収録されたのは『String Quintet No. 3 in C Major, K. 515』と『String Quintet No. 4 in G Minor, K. 516』の2作。モーツァルトが五重奏曲を作曲するに当たって、なぜヴィオラを1挺追加したのか(彼以前にはボッケリーニが弦楽五重奏曲の基準となる編成を設定すべく、2本のチェロを使っていた)、その理由はよく分かっていない。「この決断には、モーツァルトがヴィオラに対して抱いていた愛が大きく影響していると思われます」とタムスティは示唆する。「彼は2挺のヴィオラを所有していました。そしてヴィオラを1挺加えることで、彼が五重奏曲のハーモニーに求めていた声部のすべてを得られたようです」 同じようにエベーヌ四重奏団のメンバーであるヴィオラ奏者Marie Chilemmeも、2挺のヴィオラを加えたことで、モーツァルトは作曲をする上での表現の可能性を広げることができたと考えている。「彼の弦楽四重奏曲以上に、音の深みや情感の奥行きがあるのです」と彼女は言う。そしてタムスティは「彼は、別のレイヤーや別の影と共に遊ぶことができるのです」と表現する。「その結果、多くの場面に新たな親しみやすさや一層の洗練がもたらされています」 『String Quintet No. 4』のレコーディングでは、Chilemmeが第1ヴィオラを、タムスティが第2ヴィオラを担当した。一方『No. 3』では、モーツァルトが二つのヴィオラのために書いた繊細な描写をより深く理解するべく、役割を入れ替えている。「役割を交代したのは公平かつ平等であるためだけではなく、私たち2人が二つのヴィオラのパートを大いに楽しんでいたからです」とタムスティは説明する。「2人のヴィオラ奏者のためのモーツァルトの筆致は崇高なものです」 1999年にパリで結成されたエベーヌ四重奏団は、その四半世紀に及ぶ活動を通じて数々の賞に輝き、常に高い評価を得てきた。この四重奏団と一緒に演奏したことで、タムスティはその厳密な作業方法について独自の洞察を得た。「エベーヌはいつも音楽的なしぐさと音楽的な情感を第一に考えていて、私にとっては非常に驚くべきリハーサルを行っているのです」と彼は言う。「エベーヌは、まず音楽の中に、大まかなジェスチャーやあるがままの感情を見つけようとします。その後、すべての技術的なディテールを持ち込み、完璧にバランスのとれた和音や、完璧に輝くイントネーションを作り出すことができるのです。これはとてつもない能力です」 エベーヌ四重奏団の並外れたクオリティは、まったく異なる曲調の二つの作品を収録したこのモーツァルトアルバムにもよく表れている。「これらの五重奏曲はモーツァルトの音楽の光と影、長調と短調、陰と陽のようなもので、実によく互いを補い合っています」とChilemmeは言う。「残る四つの五重奏曲の録音もすでに計画中です」