前作『LP1』から約5年の歳月を経てリリースされた、カムバック作と呼ぶにふさわしい2作目。一聴して驚くのは、どこか散文的で呟きじみていた前作のボイスから一転、彼女がメロディをはっきりと歌い上げるようになっていることだろう。そんなボーカルの進化に加え、ピアノやストリングスなどの生音が積極的にフィーチャーされていることもあって、本作はより具象的なサウンドを獲得している。ここには物語がある、歌を通じて伝えたいことがあるということかもしれない。タイトルにも冠されているように、FKA Twigsは本作で「マグダラのマリア」にインスパイアされたという。汚れなきエンジェリックボイスが破滅的なグリッチノイズと拮抗した「sad day」のように、二面性を感じさせるナンバーが数多く収録された本作を聴くと、闘病生活や恋人との別れを経験した苦しみと、苦しみ抜いた果てに見出した救いを、彼女が聖と俗の象徴であるマリアに投影していることに気づくはずだ。ラッパーのフィーチャーとの異色のコラボとなった「holy terrain」ではトラップに挑戦、ここでも新境地に達している。