LAST ALBUM

LAST ALBUM

「KANDYTOWNを始めた時から、何をもって最後にするか、いつ終わるのかというのはずっと考えてきていて。やはり始まりがあれば終わりもあるものだし、どんな映画でも必ず最後はある。その最後を、自分たちのコントロールできる一番格好いい状態で、一番格好いいKANDYTOWNを残すために、自分たちのタイミングで締めくくりたいという気持ちがずっとありました」。ラッパーのIOは、2023年3月をもって活動を“終演”するKANDYTOWNについてApple Musicに語る。 東京発のヒップホップクルーである彼らは、地元で培った固い絆で結ばれている。同じくラッパーのKEIJUが言葉を継ぐ。「自分とIOくんは小中と学校が一緒。当時から2個上のIOくんたちの代が格好よくて、そういう憧れから自分の音楽をスタートさせたところもあったので、みんなについて行くという姿勢で遊んでもらっていました。その頃から作った音楽を自分たちでリリースするのを見ていて、この人たちは今後もっとすごくなるんだろうなと。それがKANDYTOWNに発展していって。自分たちはクルーの始まりから引っ張ってきてくれたIOくんが言うことを信じてやってきたし、最後もここで終わらせようとなったら、もちろんそうしようって。みんな同じ歩幅で向き合って考えて、こういう形になりました」 メンバーそれぞれがラッパー、DJ、ビートメイカー、フィルムディレクターとして精力的に活動を行ってきたKANDYTOWNが、レコーディングのために集結。文字通り最後の作品となるサードアルバム『LAST ALBUM』にはクルーの美学が凝縮されている。サウンド面の主軸を担うプロデューサーのNeetzが派手なサンプルフレーズと力強いビートを組み合わせたオープニングナンバー「Curtain Call」は、KEIJU、IOとマイクを分け合うRyohuがクルーのルールについてスピットしている。KEIJUは言う。「KANDYTOWNには10個のルールがあるんです。10代の頃、ビートメイカーのNeetzの自宅にある小さい部屋でラップを録っていたんですけど、ある日行ったらブースの横に“KoolBoy -10のルール-”と書かれた紙がバーンと張られていて。『これ、IOくんが書いていったんだよ』って。“ルーツを忘れるな”とか“誰の事も見下すな”とか、その一個一個について説明されたわけではないんですけど、IOくんの言動とそのルールは通ずるものがあったし、KANDYTOWNの心構えはこんな感じだろうということをIOくんがまとめてくれたものなので、みんなのマインドのベースとして、そのルールの存在は大きいんじゃないかな」 クルーが内包する個性の豊かさは、それぞれのストーリーや思いを描き出すフロウや語り口の多彩さが物語っているが、ひとたび、KANDYTOWNの名の下に才能が集結すると、そこには長い歳月を通じて、仲間同士で育んできたであろう強靭(きょうじん)なメロウネスが浮かび上がる。「You Came Back」ではHolly Q、Gottzのヘヴィウェイトなラップと対をなすメロディをKEIJUとIOが担い、Ryohuがビートメイクを手掛けた「Couch」では本作におけるメインのサウンドプロデューサーであるNeetzがマイクを担うなど、役割にとらわれない才能がKANDYTOWNを支えている。「『Couch』は、みんな“Ryohuくんのビートだからこうしよう”みたいなことを考えていたわけではなくて、『ビートいいね。じゃあ、ラップ書こう』っていういつも通りのノリ。僕らは昔から日常の中にラップがあり、ビートがあったので、ご飯食べた帰りに寄ったスタジオでその日にあったことを書いたり、その場にいた全員がラップをやらされたり。だから、Neetzもビートメイクだけじゃなく、自然にラップをするし、KANDYTOWNはそういう遊び感覚でずっとやってきたんですよ」とKEIJUは説明する。
 オーセンティックなソウルやファンク、ジャズ、レゲエなどのオールドスクールなエッセンスをモダンなプロダクションへと昇華したビートに、代わる代わる登場するメンバーたち。熱さとクールさが共存したグルーヴが紡がれ、ラストの「Endroll」でアルバムは締めくくられる。IOは言う。「『Endroll』は、Neetzに『一番最後の曲はエンドロールが流れるような、そういうイメージで作ってくれ』と連絡して、レコーディングの途中でトラックが来たんです。クルーの始まりについて考えると、僕らはメンバー間で二つ歳が離れていて、年上の僕ら世代は亡くなったYUSHIを中心にBANKROLLというグループ、年下のKEIJUたちがYaBastaというグループでそれぞれラップしていて。その二つが活動する中で、合流していったのがKANDYTOWNなんですよ。だから、BANKROLLから始まったKANDYTOWNは、そのメンバーで終わらせるのが一番しっくりくるだろうなと」
 そして、徹頭徹尾貫かれたKANDYTOWNの美学は、この作品で煙となって消えてしまうことなく、明日へと継承される。「もともとKANDYTOWNというのは、名前がつく前からの仲間なので、終演といってもみなさんの目に触れる形での活動が終わるだけであって、KANDYTOWN LIFEはこの先も続いていくんですよ」とIOは語る。そしてKEIJUはその終わりなき旅立ちについて思いを添えた。「だから、この先のソロ活動もやはりKANDYTOWNの地続きで、どこへ行ってもいつになってもレペゼンするのはKANDYTOWNです」

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