こんなところに居たのかやっと見つけたよ

こんなところに居たのかやっと見つけたよ

「埋もれてからが勝負だと思っていました」。クリープハイプの尾崎世界観(Vo/G)は7作目のアルバム『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』についてApple Musicに語る。2021年発表の前作『夜にしがみついて、朝で溶かして』では打ち込みを使うなど新機軸を打ち出したクリープハイプ。しかし今回は「改めて生音の良さを追求したかった」と尾崎は言う。「何がバンドサウンドなんだろうということを最近よく考えるんですけど、今はいろんなバンドがいて、スタイルも自由。だからこそ、また立ち返る場所もあるんじゃないかと思い、なるべくバンド内で完結するアレンジにしました。それだと他のアーティストの楽曲と並んだ時に音が埋もれて聞こえてしまって、最初のインパクトでは負けるかもしれない。でも、そこからぐっとこちらに引き込めれば十分戦えると思ったので、自信を持って作りました」 2024年は現メンバーになって15周年を迎えた。メンバーとの時間を重ねるたびに、この4人でなければクリープハイプは成立し得ないという思いがさらに深まったと尾崎は打ち明ける。「ライブの楽屋で何もしゃべらずにじっとしているメンバーを見ていると、職人みたいで頼もしい。本当に静かな楽屋なんですけど、それがクリープハイプらしさで、新たな発見をしては静かに喜んだり驚いたりしてる。すごく理想的な時間の流れを感じています」。バンドを長く続け、ファンに支えられていることを実感する中で、少しずつ余裕も出てきた。「もちろん多くの人に聴いてもらいたいけど、今はそれ以上に、自分たちのことを分かってくれている人たちに重点的に届けたいという気持ちがあります。デリバリーするより、お店に来てもらいたいという感じ。(届けたいという)強い思いがあるからついデリバリーしたくなるけど、そこは我慢して、お店に来てくれるのをドキドキしながら待ってる。その距離感はすごく大事だと思います」 アルバムタイトルはラストナンバー「天の声」の歌詞の一節。バンドの現在地を刻んだこの曲には、尾崎が強い思いを込めたフレーズがあるという。「『君は一人だけど 俺も一人だよ』という言葉は、語るようなメロディが連れてきてくれました。自分の中のかなり深いところから湧き出てきたので、自分でもうれしかった」。クリープハイプの4人が万感の思いを込めて紡いだ本作について、ここからは尾崎にいくつかの楽曲を解説してもらおう。 ままごと イントロがなくて歌から入るのは久しぶりです。クリープハイプらしさは特徴的なギターフレーズにこそ表れていると思うので、イントロはバンドにとって重要な要素です。でも、この曲はできた時に1曲目っぽいなと思ったので、今回はこれと信じて1曲目にしました。歌詞は「このまま そのまま」とか「楽しいままごと」とか、ひらがなの使い方を意識しました。柔らかい言葉なんだけど、音は少し角があるので、そのバランスが面白いかなと思います。 生レバ もともとサビのメロディだけあって、なかなか言葉が乗せられず、どうしようかなと迷って後回しにしていました。それでアルバムの曲が十分に出そろったころ、歌詞にほとんど意味がない曲を作ってもいいじゃないかと思って、やってみたらハマった。メンバーは驚いたと言ってましたけど、自分の中でもかなり新しい挑戦ができました。歌詞についてかなりこだわってきた自分だからこそ、あえていいかげんな感覚でやったら、また新しい意味が出てくるんじゃないか。それはこのタイミングだからできたことだと思います。 インタビュー 「今日もずいぶん調子がいい」というフレーズには、調子のいいことを言っているという意味もあります。インタビューでは音楽についてしゃべっていて、そこにうそはないんだけど、しゃべればしゃべるほど本心からずれていくというか、本心が逃げていく感じがする。音でなければ伝わらないものが音楽だと思うので、「どうやって作ったんですか」と聞かれて、頑張って言葉にした時点で何かがすり抜けてこぼれてしまう、もどかしさがあります。音楽を言葉にした時に、音楽そのものはもうそこにはいないというか…。だからまた新しく作りたいと思うんでしょうね。 dmrks まだ不満に思うことがあるという歌。恵まれているとは思うので、そんな自分が嫌になる時もありますけど(笑)、だからやれてるのかなとも思います。 もうおしまいだよさようなら イントロはサウンドチェックのようにずっと演奏していたものを録って使いました。普段リハーサルスタジオで練習している時、メンバーそれぞれが何も考えずに音を出してると、合わせるつもりはないのに同じ曲を演奏してるみたいになっちゃって、妙に恥ずかしくなることがある(笑)。そんなバンドの距離感や空気感が伝わったらいいなと思います。 天の声 できた時に大事な曲になるだろうなと思いました。自分たちを俯瞰で見て、自分たちを通してまたファンのみなさんを見て、天からの視点で全部分かっているというつもりで書いています。でもやはり分からない部分もあるから、それは正直に伝えたくて、どうすれば信用してもらえるかをすごく考えます。そのためには、自分は何ができていないか、どこが足りないかを自分で考えて、ちゃんと言葉にして、曲を通して伝えたい。この曲は特にそれができてるんじゃないかなと思います。

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