可愛女子

可愛女子

「バンコクでごはんを食べてる時に、ポッと思いついた言葉をタイトルにしました」。水曜日のカンパネラの詩羽(Vo)は、4作目のEP『可愛女子』についてApple Musicに語る。2025年の夏に、詩羽が加入してから初のアジア/ヨーロッパツアーを開催した水曜日のカンパネラ。本作は、世界中のファンを沸かせた彼らの勢いを感じさせる8曲が収録された。“かわいいじょし”と読むタイトルは「私は“可愛い”が大好き」と語る詩羽が、“好”の漢字を分解して“女子”にするアイデアから発案した。「実は僕も“可愛いおじさん”になりたいとずっと思ってました」とトラックメイカーのケンモチヒデフミは明かす。「僕はおじさんだから大丈夫かな?って思ったけど、女性の方から『かわいいっていうのは、カッコいいも含めて、すべてを網羅した一番の褒め言葉』と聞いて。自分ではなかなか使わない言葉だけど、水曜日のカンパネラとしてなら言えるから、このチャンスがあってよかったです」 詩羽はタイトルの発案をはじめ、歌の解釈やレコーディングへの向き合い方など、すべてにおいて迷いなく、自分のスタンスをはっきりと示す。「私は悩んで立ち止まることがないタイプ。いろんな選択肢を並べて迷うとか、人生においても本当にないです」。そんな詩羽の潔いスタンスに、ケンモチはいつも驚かされているという。「例えば僕が『シャトーブリアンをテーマにした曲があってさ、どうかな?』って差し出すと、詩羽は『分かりました、肉の名前、はい歌います』って、すっと受け入れちゃう。自分としては『大丈夫だったのかな、これで…』とか思ってる間に出来上がっていくから、ありがたいんですけど、毎回不安に包まれます(笑)」。ひらめきをラリーのように交わしながら生まれた、ちょっと不思議な8編の歌物語。ここからは詩羽とケンモチに、いくつかの楽曲を解説してもらおう。 ウォーアイニー ケンモチ:アニメのタイアップ曲として、原作の世界観を取り入れつつ、僕らの個性も出したいと思っていました。以前から麻雀の歌を作りたくて、そこに中華系のネタと料理のモチーフを盛り込んでいます。何人かのキャラクターが交互に歌っていく、群像劇のようなストーリーにしました。 詩羽:いつもの自分の声と、少年っぽい声、めちゃくちゃ女の子らしい声など、いろんな歌い分けをしています。この曲のテイストから、漢字4文字のEPタイトルや、中華っぽいビジュアルを思いつきました。 サマータイムゴースト 詩羽:歌うのがすごく難しかった曲。特にサビの部分は自分の中にない音の流れだったので、「このメロディ、むずっ」と思いました。私はわりと何でもそつなく歌っちゃうタイプなんですけど、この曲は珍しくちゃんと練習してからレコーディングに臨みました。 ケンモチ:いつもは言葉に対して歌いやすいメロディを考えているんですけど、この曲は鍵盤でメカニカルに作っていきました。だから歌詞とメロディの乖離(かいり)がいつもより激しくて、でもそれがあんまり聴いたことのないメロディになり、新鮮でいいなと思って採用しました。 シャトーブリアン ケンモチ:海外ツアーが決まり、世界中どこに行ってもワンワードで通じる題材を探して、「シャトーブリアン」に行き着きました。もともとはフランスの小説家/政治家だった人の名前らしくて、その人が好んで食べていたことから、肉の部位の名称になったそうです。響きがいかにも高級そうですよね。曲調は、安い機材の音でめちゃくちゃ踊るゲットーテックやゲットーハウスというジャンルを取り入れています。高級なものを、あえてちゃっちい感じに扱うのが面白いかなと思って。ロンドンでライブした時、一番盛り上がるのは「バッキンガム」だろうと思ったのに、この曲が一番ウケて、「バッキンガムじゃないんかい」と思いました(笑)。 願いはぎょうさん ケンモチ:水曜日のカンパネラの中でも特にメッセージ性が強く、真面目に作った曲。願いがいっぱいあるのはいいことだけど、今この時代はいろんな人の願いを見ちゃったり、願いをかなえた人と自分を比較したり、そういうことがたくさんあって大変だなと思う。でもそれに惑わされないで、あなたはあなたらしく生きてね、というメッセージをいい感じに伝えたかった。映画の主題歌に祭ばやしのリズムを入れて、小さい子から大人までみんなが親しんでくれたらいいなと思って作りました。