

南フランス出身のシンガー・ソングライター、Jehro。本作は、イギリスを拠点に活動してきた彼が、2007年にリリースした1stアルバムだ。アコースティック・ギターを基軸にしたサウンドと、ソウルフルでありながらどこか洗練された歌声は Jack Johnson になぞらえられることも多いが、都会的でありながら土着的な雰囲気も漂わせる個性は彼ならではのもの。レゲエ、カリプソ、フォークを愛し、アルバム全体にその要素を練り込ませながら、しっかりと Jehro 印のサウンドを構築しているのが印象的だ。Police を思わせるようなレゲエ・ビートの “Everything”、情熱的なスロウ・バラード “Long is the Way”、ラテン・ムードの “Continuando” など、さまざまなバリエーションが並ぶが、どれもすぐに彼の作品と分かる個性を放っている。これはやはり声の力が大きいだろう。壁に飾った絵のように、気にしていないときにはじゃまをせずそこに存在するが、いったん注目してしまうと否応なくはまってしまうような、さりげなくも力強い引力を持った声なのだ。